日本の人口が減りつづけている。出生数は2016年に初めて100万人を下回ったが、2065年には約55万人にまで落ち込むという。将来のためにどんな備えが必要なのか。「20年後の日本」を襲う6つの課題について識者に聞いた。第6回のテーマは「大量リストラ」だ――。(全6回)
※本稿は、「プレジデント」(2018年1月1日号)の特集「老後に困るのはどっち?」の掲載記事を再編集したものです。
人類はロボットの奴隷となるのか
10年後あるいは20年後という将来、人工知能(AI)やロボットが台頭し労働環境が大きく変わる。
10年後までに、タクシーや長距離トラックのドライバーの仕事は、完全自動運転の車の登場で消滅している。これにより、123万人の雇用が消失する。銀行員や弁護士、数学者といった、専門的な頭脳労働の領域もAIに代わってしまう。人間の脳を上回る計算が可能なスーパーコンピュータが、急速に普及するからだ。世論や社会規範などを鑑みて総合的な判断を下す裁判官も然り。人の感情をくみ取り、人間的で正しい法解釈をAIは可能にする。スポーツのジャッジもAIが行う。これらはすでに実用化に近づきつつある。
20年後になると、完全に人間と同じ仕事を可能とする汎用人工知能が登場。AIは研究者や経営者などの仕事を奪い、医学的な診断をAIが下す。企業では管理職も不要となり、AI上司に従うことに。デイトレーダーや銀行の融資業務、税理士、弁護士助手など、高度な専門領域ほどAIの進出が著しくなる。
店員や大工など肉体労働系は20年後も残る
英・オックスフォード大と野村総合研究所による調査結果では、今後10~20年以内に日本人の仕事の49%がAIとロボットに代わる可能性を指摘するが、私は7割の仕事がなくなると予測する。AIが人間の能力を超えるとされる2045年以降の状況は、想像することも難しい。
そんなロボットは人間の仕事をすべて奪っていくのだろうか。実はロボットは、腕や足に比べて指の細かい動きの制御が難しい。コンビニで商品を一つ一つ棚に並べていくような仕事は難しい。従って、ファストフード店員や、大工など肉体労働系は、20年後も残る可能性が高い。