「社員の働きやすさと企業価値は連動する」

佐山はメーカーの技術者から、銀行を経て、M&Aのプロとなった。そのため、現場を重要視し、「社員の働きやすさと企業価値は連動する」という考え方をもつ。佐山の率いるインテグラルでも、リストラなどで短期的に企業価値を上げるのではなく、投資先に経営者を送り込み、投資先の社員と汗をかいて企業再建をめざす。こうした佐山の手法に、山谷は共鳴するという。

「航空業は安心安全が最も大切ですが、それはひとりではつくれません。関係する人みんなが愛情を持って自分の仕事をすることによって初めて担保されるものだと思います。神戸空港での入社式は、新生スカイマークを支えているものは何かという視点に立ち返られたということではないでしょうか」

スカイマークの佐山展生会長(撮影=プレジデントオンライン編集部)

スカイマークの経営再建にあたり、佐山は全国9都市の支店をくまなく回り、現場の社員と直接話す場を設けてきた。

他方、山谷は2015年に関西エアポートの社長に就任するまでは親会社オリックスの副社長を務めている。1980年に新卒でオリエントリース(現オリックス)に入社。45歳でオリックス銀行の社長に抜擢されて以後、不動産、介護事業などリテールビジネスの経営に携わってきた。

「お客さまに向き合うのは職員です。社長自らお客さまと関わることはほとんどありません。職員が会社のイメージをつくり、会社の価値をつくる。経営者の職員に対するコミュニケーションや企業としてのまとまりというものがなければ、ビジネスは成り立たない。想像ですが、佐山さんは、スカイマークにとって大事なのは何なのか、会社を発展させるのはどこなのかというメッセージを新入社員に送ることによって、会社がさらによい方向に変わることを期待されているのではないでしょうか」

本来、神戸空港は24時間営業が可能

2つめの理由は、民営化以降の規制緩和への期待だ。

海上空港である神戸空港は24時間営業が可能だが、現在は7時から22時まで、発着枠は往復60便まで、航路は国内線のみ、という規制がある。民営化を機に地元自治体や経済界は、神戸空港の今後の活用策に関する議論を始めようとしている。

関西エアポート神戸の山谷佳之社長(撮影=三宅玲子)

佐山は「規制緩和が進めば、神戸空港は関西の玄関になる」と期待する。たとえば離発着が24時まで可能になれば、新大阪駅から新幹線の終電(現在は21時23分の東京行き)が出てしまったあとでも、関西圏から東京に帰れるようになる。

関西には関空、伊丹、神戸という3つの空港がある。そして空港ビジネスはインバウンドの急増で新しい商機を迎えている。3つの空港が「競合」するのではなく、「協力」することで、関西の経済力を高め、ビジネスをより大きくしていくこともできるだろう。関西エアポートが3空港一体での運営権を取得した背景には、そうした期待がかかる。

「規制緩和に関しては、まずは神戸市民や神戸の経済界がニーズをどう考えていくか、これからの議論が大事です。そのうえで、もしも規制緩和されれば神戸空港からもっと飛ばしたいというスカイマークのメッセージは、地域にとっても空港にとってもありがたい」(山谷)