これは、日本にいて直接コミュニケーションをするとき以外も同様だ。

「今は半分海外に出てしまっていますから、その間はメールを使ってのやりとりになります。このときに、できるだけやりとりをスムーズに行うため、ある程度、オプションを用意して、イエス・ノーで解答が導き出せるように意識します。まぁ、なかなかそうもいかないときも多いんですが」

重要になるのは優先順位。隈氏とまわりとの間で、優先順位が共通認識されていないと、コミュニケーションがうまくいかなくなる。

「すべての段階で100を目指してやっていこうとすると大変なことになってしまいますので」

茶飲み話にも緊張感を持つ

社長とは濃密なコミュニケーションをしないといけない、と語っていたのは、中川政七商店の執行役員で、デジタルコミュニケーション部長、緒方恵さんだ。

「資料をがっちり作って社内営業、という会社ではないんです。そのかわり、工芸に対する危機感が強いので、スピード感を死ぬほど重要視しています。もちろん成果も厳しく求められますが、スピードも求められますから、ちょっとした話のインパクトがでかい。“こうしちゃおう”という話が早いのは醍醐味ですが、裏を返すとものすごい緊張感がありますね」

それこそ、茶飲み話で大きな話が決まったり、組織が変わったりすることもあるので、普段からいろいろな側面で深く考えておくことが役員には求められるという。

「だから、面白いのは、社長とのランチひとつとっても、極めて重要なプレゼンの場になる、ということなんです。逆に僕は、このランチを積極的に入れてもらうようにしています。社長がマネジメントできない領域の仕事を持っている人間だからです。とはいえ、僕だけが永久にその領域に強いというのは、明らかにナンセンス。社長と共有して彼のリテラシーが上がるとか、社長を経由して何か施策に落ちてみんなのリテラシーが上がる、全員のレベルが上がるとか、そういうことが大事なんです」

そして社長相手だからこその気配りも、報告・連絡・相談では重要なこと。「これは『社長あるある』だろうな」と思える話を聞かせてくれたのは、サニーサイドアップの社長室副室長の谷村江美さん。報告時に、次原悦子社長が上の空になることがあるのだ。