着々と進む軍事的準備

米軍は、平昌冬季五輪中、中止していた米韓合同軍事演習を4月1日から実施すると発表しました。3月19日には米軍首脳が「米朝首脳会談が進展しない場合に備え、軍事的な準備を進めていく」方針を明らかにしています。

別の保守系新聞の「ワシントン・エグザミナー」は、「米朝外交が失敗に終わった場合は、トランプ大統領は直ちに空母3隻を含む目に見える軍事力強化に踏み切ると同時に、在韓米軍の家族など非戦闘員の退避を命ずるべきだ」とアドバイスしています。(*注4)

3月の全国人民代表大会で再任された中国の李克強首相は、米朝首脳会談での「進展なし」を織り込み済みなのか、「(朝鮮半島の核問題を)早期に対話のテーブルに戻し、新しい進展をもたらすように望む。中国も最大限努力する」と述べています。

3月25日から28日にかけて、金正恩は中国を突然非公式訪問し、26日に習近平国家主席と会談しました。金正恩は中朝関係の改善や朝鮮半島の非核化について言及しつつ、米朝会談への意欲を示したと報じられていますが、ワシントンでは「米朝首脳会談の行方を危ぶんだ金正恩が、習近平に助けを求めようとしているのかもしれない」(米シンクタンク上級研究員)といった見方も出ています。

(*注1)"How Does Trump Deal with North Korea When He Can't Trust South Korea," Gordon G. Chang, Daily Beast, 11/6/2017
(*注2)"GALLUP:Trump Job Approval Weekly," news.gallup.com., 3/12/2018
(*注3)"In North Korea talks, Trump must be ready to walk away," Post Editorial Board, 3/9/2018
(*注4)"Trump should talk to Kim Jong Un, but with a stopwatch and conditions," Washington Examiner, 3/12/2018

高濱 賛(たかはま・たとう)
在米ジャーナリスト
米パシフィック・リサーチ・インスティチュート所長。1941年生まれ。カリフォルニア大学バークレー校卒業後、読売新聞入社。ワシントン特派員、総理大臣官邸、外務省、防衛庁(現防衛省)各キャップ、政治部デスク、調査研究本部主任研究員を経て、母校ジャーナリズム大学院で「日米報道比較論」を教える。『アメリカの教科書が教える日本の戦争』(アスコム)、『結局、トランプのアメリカとは何なのか』(海竜社)など、著書多数。
(写真=EPA/時事通信フォト)
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