長々とオジサンが語りたがるのは「脳が気持ちイイから」

そんな「オレ様」系コミュニケーション事例にこんなものもある。

2017年6月に創刊した50、60代の男性向け雑誌『GG(ジジ)』の編集長が、雑誌のインタビューで指南した「おじさん向けのナンパ術」というものだ。

「(美術館に行き)熱心に鑑賞している女性がいたら、さりげなく『この画家は長い不遇時代があったんですよ』などと、ガイドのように次々と知識を披露する。そんな『アートジジ』になりきれば、自然と会話が生まれます。美術館には“おじさん”好きな知的女子や不思議ちゃん系女子が訪れていることが多いので、特に狙い目です。会話が始まりさえすれば、絵を鑑賞し終わった後、自然な流れで『ここの近くに良さそうなお店があったんだけど、一緒にランチでもどう?』と誘うこともできる。もちろん周辺の“ツウ好み”の飲食店を押さえておくことは必須です」(「週刊ポスト」2017年6月16日号より)
岡本純子さんの新刊『世界一孤独な日本のオジサン』(角川新書)

ネット上では「うっとうしい」「キモイ」と大ブーイングだったが、そんな「うんちくを語りたがるおじさん」は少なくはない。このように、男性が主に女性に対して、見下すように、一方的に解説・助言・説明することをアメリカではMansplaining(マンズプレイニング、man+explaining=説明する)と呼び、男性の独りよがりのコミュニケーションを揶揄することがあるが、そんな造語が最近、日本でも流布している。

▼「自分のことを話す時、人はセックスと同じ快楽を感じる」

ではなぜ、おじさんは語りたがるのだろうか。

それは、ずばり「気持ちがいい」からだ。米ハーバード大の心理学者ダイアナ・タミール氏らの研究(2012年)によれば、「自分のことを話す時、それが会話であろうと、ソーシャルメディア上であろうと、人はお金や食べ物、セックスと同じような快楽を感じる」のだそうだ。

約200人の脳をfMRI(機能的磁気共鳴画像診断装置)で調べたところ、被験者が自分のことを話している時、脳内の側坐核、さらに、腹側被蓋野と呼ばれる領域の動きが活発化するのが確認された。これらの領域は、神経伝達物質、ドーパミン放出に関係があるとされる箇所で、ドーパミンは快楽物質とも呼ばれ、食事やセックス、お金などの報酬やドラッグによって分泌されるものだ。

写真=iStock.com/recep-bg

普段は、男性は女性より口数は多くない。しかし、「男性は、『世界に認めてもらいたい』、『より多くの人に影響力を与えたい』、『尊敬されたい』、という欲求があるため、人前で話す機会が与えられると、どうしても話が長くなる。大勢を前にした男性のスピーチは結局、ほとんど自慢」という説もある。