せっかちな人の利点はどこにある?

わかりやすい例をあげよう。ストレスの多い現代社会で、イライラを手っ取り早く解消するために煙草を一服、という人は多い。ところが喫煙は肺がんなどを含めた健康リスクを高めることはすでに科学的に証明されており、よく知られている。

こう考えると喫煙は、目先の、満足(ストレス解消)と引き換えに将来の利益(健康)を低めることになりかねない。それでも煙草を吸うという行為は、まさにせっかちな行為である。

喫煙という行為の度合いと、時間割引率の相関性を調査してみた。

まず、煙草を吸う人とまったく吸わない人を比較してみよう。現在の100円と1年後の等価は、煙草を吸う人(全喫煙者)は平均216円。対して煙草を吸わない人(全非喫煙者)の平均値は169円である。時間割引率に換算すると、煙草を吸わない人の69%に対して、吸う人は実に116%と非常に高くなっている。煙草を吸う人は全般的に、未来より現在の価値や利益をより重視しているという結果が出たことになる。

1年後にいくらもらえたら今日の100円を我慢できるか
図を拡大
1年後にいくらもらえたら今日の100円を我慢できるか

また、たまに煙草を吸う人(軽度喫煙者)よりヘビースモーカー(高度喫煙者)のほうがより時間割引率は高くなる(図参照)。

ここまでの結果から、もっとも時間割引率の低いグループは、煙草を吸ったことのない人(生涯非喫煙者)だろうと想像できる。ところが意外なことに、喫煙経験があるが、すでに禁煙に成功した人(過去喫煙者)が、もっとも時間割引率が低いのだ。1年後の等価は158円である。