投資額、通信網……、山積みの課題

気になるのが、楽天の掲げる投資金額である。設備投資のための資金調達残高として、19年のサービス開始時において約2000億円、2025年までに最大6000億円を予定している。

まず新規参入には「引っ越し代」が必要になる。新規に割り当てられる周波数帯の現在の利用者が、別の周波数帯に移行するための費用を払わなければならず、仮に1.7GHz帯を獲得した場合、約2000億円を最大3事業者で負担する。

それだけでも巨額だが、設備投資費はさらに莫大だ。基地局の設営費用、場所代、回線の維持費と、とにかく金がかかる。楽天は「最大6000億円」の資金調達を謳っているが、3大キャリアの投資額は各社とも年間で数千億円。4Gのネットワークだけでも、累計すれば兆単位の投資をしてきた。

3大キャリアがこれまで追加、追加で設備投資をしてこられたのは、決して安くはない通信料金を設定し、回収できたからだろう。その積み上げは大きい。これから格安スマホの普及によって通信料金が下がったとしても、数千万の契約数があるため、キャッシュフローが潤沢にあり、5Gにも投資できる。

楽天がユーザーに支持されるためには、安価な料金体系が求められるかもしれない。しかし安くしたらしたで、設備投資を回収できないジレンマが生じる。そうなると値段が高くても、消費者が使いたいと思うような価値やサービスを提供しなければならない。

そして何よりの問題が、ネットワークである。たとえ廉価でもすぐつながらなくなるようなネットワークの弱いキャリアをユーザーは選ばないだろう。

3大キャリアのネットワークは、世界的に類を見ないほど、広くて深い。海外でスマホを使っていると、すぐに3Gの波をつかんでしまい、不便に感じることがある。それが日本国内では安定して4Gをつかみ、快適にネットワークを使うことができる。いわば「深い」のだ。

そうしたネットワークをゼロから築くことは難しい。おそらく楽天は、ローミングを利用するのではないだろうか。ローミングとは、契約している事業者のサービスエリア外になっても、他の事業者の設備を利用することで通信できるようにすることだ。たとえば、ソフトバンクに買収されたイー・アクセスは、当初、東名阪などの都市部を中心に基地局をつくった。その間、地方など他のエリアはドコモにローミングさせてもらいながら、ネットワークを広げていった。