「ルール」や「常識」に従ったままでいいのでしょうか。人間関係に気をつかって「お人よし」を演じていれば、心はどんどん疲弊していきます。エッセイストで講演家の潮凪洋介氏は、「ときにはルールや常識を無視して、自分本位な生き方をすることが大切だ」と説きます――。

「いい人」は人生に対する努力を怠っている

私は作家であり講演家でもあるという職業柄、非常に多くの方々から生き方に関する相談を受けています。その過程で、「いい人」であるがゆえに、仕事にも恋愛にも人生そのものにも自信が持てず、萎縮してしまう人を何百、何千と見てきました。それはたとえば、次のような人です。

・やさしいと言われるけど、それが弱さの裏返しではないかと不安を持つ人
・「お人よし」なせいで損な役を押しつけられ、悩んでいる人
・愛想笑いが得意だけど、実は自分に自信がない人

いずれも他人のことを思いやり、「いい人」として生きています。しかし、ここで1つの事実を言いましょう。「いい人」とは「どこにでもいる人」であり、ワクワクするような人生を歩むことは、なかなかできません。「いい人」でいる限り、その人には限界があるのです。

潮凪洋介(原著)、うげっぱ(著)『漫画 もう「いい人」になるのはやめなさい!』(KADOKAWA)

「いい人」を抜け出して、本来の自分をとり戻した人は、仕事・恋愛・人生のすべてがうまくまわり出します。反対に「いい人」のままでいると、仕事においても恋愛においても人生においても、大きな損をします。これが私の実感です。

多くの人は年齢を重ねるごとに「いい人」になっていきます。会社や地域コミュニティーなどで人生経験を積むうちに、物わかりのいい分別のつく人物でいるほうが波風を立てずにすむ、すなわち、楽に生きられることを知るからです。

「年相応のことしか」しないのは寂しい

ところが、「いい人」になって楽に生きれば生きるほど、人生に不満が募っていきます。自分に自信が持てず、仕事や恋愛の大事な局面で萎縮してしまいます。それは当然のことでしょう。楽に生きているだけで、より充実した人生を送ろうという努力を怠っているのですから。

どこにでもいる「いい人」でいると、仕事・恋愛・人生のすべてにおいて損をすることは男女問わず当てはまるのですが、ここでは話をわかりやすくするために、男の生き方を例にしましょう。

世の中には2種類の男がいます。1つは「もう年(大人)だし」が口癖の男。もう1つは「まだまだこれから!」が口癖の男。前者は「わかりやすくオヤジ化」していきます。後者は「キラキラした大人の少年」になります。

「もう年(大人)だし」はとても便利な言葉です。「ルールを守る」や「迷惑をかけない」といった方向に使用される場合、この言葉はしっくりきます。「もう年(大人)だし」のひと言の中には、自立心と信頼感がありますし、社会的な評価も自然と高くなるのです。

ところが、これを連発することは男からおもしろみをはぎとることになります。一歩間違えれば「情熱」「ユーモア」「躍動感」「型にはまらない考え方」「バカげた夢」などの、男の魅力を構成する重要な要素を眠らせてしまうのです。もちろん、年相応の仕事観、考えを持つのは悪いことではありません。しかし、「年相応のことしか」しないのは寂しいのではないでしょうか。