人生は住む場所で決まる――。住まいの専門家は、そう口を揃えます。「プレジデント ウーマン」(2018年2月号)では、シングル、出産・子育て、教育など、さまざまな立場から街を評価し、「働く女性に優しい街ランキング」を作成しました。担当編集者が特集づくりの舞台裏をご紹介します――。

住む街は「少し背伸びして」選ぼう!

パラパラと小雨が降る朝でした。住宅ライターの福岡由美さんに、街選びのポリシーについて伺うため、広尾のハンバーガーショップを訪れました。「私が西麻布に引っ越してきた日も、こんな天気だったわ……」と感慨深げ。

福岡さんが友人とよくランチをしたというそのお店でインタビューをし、その後、有栖川宮記念公園を超えて六本木ヒルズまでを散策しながら撮影したのでした。

名古屋出身の福岡さんが20代で上京するとき、東京の地理などまったく理解していなかったにもかかわらず、住む街は西麻布と決めていたと言います。その理由を尋ねると、「当時、とんねるずの『雨の西麻布』という曲が流行っていて」というお返事。(面白い! そういう街の選び方もあるのか……。でも、これって読者の参考になるんだろうか……?)

写真=iStock.com/voyata

若干の不安を感じながらもインタビューを続けると、西麻布はとても刺激的で、ラジオのレポーターとしてバリバリ働く福岡さんにとって非常にいい街だったと言います。街選びのアドバイスとして読者に示してくれたのが、住む街は少し背伸びして選ぶこと。「ワンランク上の自分を目指すモチベーションが湧いてくるでしょう?」と福岡さん。同時に、背伸びをしすぎるのもよくないと、自分の失敗例を披露してくれました。

身の丈に合わず、波乱万丈な人生に

福岡さんはしばらく西麻布に住んだのち、婚約者が住む別の街に住まいを移したのだそうです。ところが、その街はハイソすぎて自分の身の丈に合わないと感じるようになります。そしてなんと、婚約者ともぎくしゃくして婚約を破棄してしまったのだとか! 彼からは地元へ帰るように諭され、両親からも勘当されてしまった福岡さんは、名古屋の都心部へ。

名古屋に移ってから住宅ライターの仕事を始めるようになり、新たな人生のスタートを切った福岡さん。今では東京にも拠点を置き、忙しく活躍されています。

そんな福岡さんが、住まい選びのセミナーでよく言っていることがあります。それは、住む場所に合わせてライフスタイルやライフサイクルが創られるということ。「名は体を表すように、家もその人の体を表すもの。家の存在は、家主の人生において非常に重要です。ですから丁寧に選んでほしいですし、何より住まい選びを楽しんでいただきたいですね」。

取材したほかの皆さんも、「人生は、住む場所で決まる」と言っても言い過ぎではないと思えるくらい、街選びの大切さを語ってくれました。だからこそ特集では、街を選ぶ際に本当に参考にできる情報を掲載したいと考えました。