さらに、経営判断と称して計算結果を操作してはならない。期待の新製品であっても、発売当初から爆発的に売れることは少ない。したがって、計算の結果は、当初の期待や予想を大幅に下回ることになるだろう。このような場合に、しばしば採用されるのが、少しでも良い結果が出るように、計算に経営判断を盛り込む方法である。具体的には、製品原価の算定に当たって、製造間接費負担を一定期間免除したり、計算結果に一定率を乗じて、製品原価を低めに設定したりする。

経営判断の基礎となる数値の信頼性を損なわせるような処理を経営判断として行うと、製品別・事業別の収益性情報にひずみが生じて意思決定を誤ることになる。さらに、誰も計算結果を信頼しなくなり、経営の根幹が揺らぐ。

(4)長期滞留在庫をすべて廃棄する

まずは徹底的な棚卸しを行うことから始めたほうが良い。ほとんどの会社では、倉庫に格納され、数カ月、場合によっては数年以上滞留している長期滞留在庫の多さに驚くことになるだろう。そして、長期滞留在庫の大部分は、特殊仕様の少量生産品である。「いつか売れる」は「いつまでも売れない」とほぼ同義である。ルールを決めて、長期滞留在庫を一斉廃棄すると良い。「いつか売れる」ものを、売れる数カ月、数年前に製造する必要はない。売れることがわかった時点で、製造すれば良い。

(5)製造現場の製造状況を常にモニターする

工場で働いている作業者のすべてが、忙しく働いていることを是とし、製造数量が減少すると意気消沈する。そして、製造数量が減ってしまうと、本社の指示や当初の生産計画にないものを作り始める。将来売れるであろう、あるいは、数年に一度限られた数が必要となる製品を作り始めるのである。

ここで確認しておかなければならないことは、製造現場で働く人々の人件費は、固定費であり、埋没原価(sunk costs)であるという事実である。製造数量が多くても少なくても、人件費には変化かがない。変わるのは、製品単位あたりの労務費にすぎない。たくさん働いたからと言って、企業への貢献はまったくない。それどころか、残業代がかさみ、段取り替えが増加し、すぐには売れない製品の在庫関連費用が発生する。つまり、良かれと思って生産計画にない製品を製造することは、企業の大きなコスト負担を増加させるのである。

「生産計画にない製品の製造は決して行わない」ということを徹底することが、極めて重要である。しかし、いくら言っても、工場では、必要とされないものを作ってしまう。これを防止するのは、本社が工場の製造状況を常にモニターし、無駄なものを一切製造しないようにする厳密な管理を行う必要がある。「製造指図書のない製品は、製造されることはない」と本社では信じているが、それはルールであって、製造現場では、善意に基づいてルールは破られるのである。