熱を帯びつつある「K」の集団
慶大がチームとしての箱根駅伝出場を目指す上で、大きなハードルは1つ。選手のスカウトである。スポーツ推薦がないため、付属校からの進学を除けば、高校生ランナーはAO入試か一般入試で門をたたくしかない。まもなく初年度が終わりつつあるなかで、プロジェクト発足後1期生とも言うべき入試のシーズンを迎えている。
慶大の場合、スカウトと言っても、インターハイ、地区高校総体の視察や、全国の競走部OBから送られる情報をベースに選手の元へ出向き、一対一で話をして、受験を勧めるというスタイル。競走部発信のプロジェクトのため、入試制度への働きかけはできない。駅伝強豪校のように、声が掛かればほぼ入学が保証されることはないわけだ。一般入試はこれからだが、I期、II期あるAO入試を終えた段階では、競走部にとっては厳しい状況ではあるようだ。しかし、保科コーチは前を向く。
「AOに関してはよく偏差値が高い高校から、とも言われるのですが、そうではありません。慶應で何がしたいか、どのように社会貢献がしたいかというビジョンが大学側に伝わるかが重要です。今年は、インターハイ入賞経験のある選手も入試を突破して入部予定です。ウチは選手の勧誘合戦には加わることができないけれど、逆にいえばどうしても慶應に行きたいという学生しかこないし、そもそもそうでないと受験してくれないので、個々人のパワーが強いチームができるはず。それを現役選手にも派生させて、良いチームを作っていきたい」
OBの1人に話を聞くと「こういう取り組みは、1年目はなかなか加速しないものですが、すごい加速力で立ち上がったなと実感しています。保科さんが来てから、現役部員たちも目つきが変わってきた」という。選手として十分な実績を持つ、手だれのコーチ就任を機に、チームの雰囲気は大きく好転しようとしている。