僕の持論「簡単にツイートできるからといって注意義務は減じない」
こんな思いで、今回、ジャーナリストを称する岩上安身氏に対して、名誉棄損に基づく損害賠償請求訴訟を起こしたんだ。
気軽に情報発信できるツイッター。しかし拡散力も著しく高いツイッター。今はツイッターの世界は何が本当で何が嘘かも分からないくらいの場になっている。それでいながら、便所の落書きと違って、多くの人が目にすることにもなるので、他人の名誉を傷つけやすいし、傷つけられた被害者の負担も大きい。
名誉棄損というのは、加害者側は事の重大性をあまり認識しないんだよね。加害者側はたいてい、たいしたことを言っていないのに……という認識。でも傷つけられた方の負担は非常に大きいというのが名誉棄損の事例の実情なんだ。
僕は今回岩上氏のツイート、しかもリツイートの内容が名誉棄損にあたると訴えた。リツイートの内容は「橋下徹が大阪府の職員を自殺に追い込んだ」という内容だった。これは、これくらいの表現はまあいいじゃないと軽く扱うわけにはいかない。
しかも、岩上氏は、かつてジャーナリストとしてテレビ番組のコメンテーターにレギュラー出演した経歴があるし、現在もジャーナリストして活動している。IWJ(インディペンデントド・ウェブ・ジャーナル)というものを立ち上げ、会費を募っている。バリバリのプロのジャーナリストだ。
こういう者が、ツイッターというものを使って情報発信をする際のルールはどうあるべきか。ツイートやリツイートが簡単にできるからといって、注意義務が減じるわけではないというのが僕の持論だ。
むしろ簡単に発信ができ、さらに拡散力も強く、一度投稿されたものは消去することが困難であるからこそ、紙媒体とは異なる注意が必要になってくると思っている。
さらには、ネットによって一個人が簡単に情報発信することができるようになったので、一個人が力のある者に対して挑むこともお手軽にできるようになった。これは大変良いことだ。ただその際に、力のある側が一個人を名誉棄損で訴えると、「それはSLAPP訴訟(詳しい定義は後述するが、不当訴訟というような意味)だ!」と訴訟提起した側が批判を受けるようにもなってきている。この延長線上で、力の強弱にかかわらず、情報発信者に対して名誉棄損で訴えると、表現の自由を封殺するSLAPP訴訟だ! 民主主義への冒涜だ! という批判が起きやすくなっている。近代法治国家では、訴える自由こそが原則なのにね。
相手である岩上氏も僕の訴えはSLAPP訴訟だ! と批判しているし、徹底抗戦すると宣言しているようなので、この訴訟において、ツイッターでの情報発信におけるルールというものをきっちりと定めていきたいと思う。
これは、これからますます力を持つであろう一個人のネットを通じた情報発信を守るために、今無秩序となっているネット発信の世界に一定のルールを明示する試みである。
(略)
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※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.89(1月30日配信)を一部抜粋し簡略にまとめ直したものです。もっと読みたい方は、メールマガジンで! 今号は《【ネット時代の表現の自由(1)】僕が岩上安身氏を訴えたわけ》特集です!!