表現の自由を守ることは民主主義の大原則だ。しかし……
このように表現の自由が認められている日本社会は、ほんとありがたいね。これが中国や北朝鮮だったら、一国民が現職や元を含めて軍の最高トップに悪口を言い続けられるか。そんなの無理だよね。ただ国民に表現の自由が保障されている分、権力を持っている側は辛いよ。もう何でも言われっぱなしだから。僕も知事、市長、国政政党の代表をやっていた8年間は、何でもありの状況で言われっぱなしだった。
表現の自由を守ることが原則であることは十分承知している。憲法21条の表現の自由は、自由・民主社会においては大切な大切な人権だ。自由・民主社会を維持するための人権ともいえる。
自己実現と自己統治。人間が自らの個性を発揮し、人格形成を発展させるためには表現の自由が必要不可欠だ(自己実現)。そして国家権力をチェックし国民が自らの自由を国家権力によって奪われないようにするためにも表現の自由が必要不可欠だ(自己統治)。
だから政治家時代は何を言われようが、名誉棄損で訴えるなんてことはしなかった。
(略)
既存メディアが情報発信を独占していた時には、一応既存メディアがスクリーニング(情報をふるいにかける)をしていた。他人を傷つけないように、虚偽の事実を報じないようにある程度注意をして、それが機能していたところもあるだろう。
しかし一国民が情報発信する時代にあって、それぞれの一発信者が、どこまでそのような注意をしているのか。ネットでの情報発信は、拡散も早いし、いったん拡散してしまうとそれを消去することは著しく困難になる。これまでの既存のメディアの発信よりもむしろ注意が必要になる。
他方、あまりに注意を要求すると、一個人の情報発信が委縮してしまう。このバランスを取るのはほんと難しい。
だからこそ、一国民に開放されたネットによる情報発信、表現の自由を最大限に守るためには、一個人であっても何をやってはいけないのかをはっきりさせる必要があるんだ。表現の自由を守るためにルールを明確化する。何がダメなのかが不明確なことが、表現の自由を最も委縮させる。情報発信者は「忖度」しなければならなくなるからね。