元横綱・日馬富士による後輩力士暴行事件が貴乃花親方の理事解任へと飛び火し、混乱が続く相撲界。改革の一つのモデルとなるのが、大阪市立桜宮高校のケースである。部活の体罰に抗議し生徒が自殺するという大事件が起きた当時、大阪市長を務めていた橋下徹氏が取ったのは「入試の中止」「教職員の大幅入れ替え」という強烈な措置だった。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(1月23日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

関係者にも当初は実感がなかった「体罰で自殺者」の恐ろしさ

(略)

組織の雰囲気を変えるというのは非常に成果が見えにくいことである。そしてそれを成功させるためには妥協を許さない徹底した改革の取り組みが必要である。

そのためには、改革が一定成果を上げるまでは、組織の活動をいったん止めてしまうことが非常に有効だ。ある種のショック療法だ。このようなショックを与えることで、活動を再開させるために組織のメンバーが皆必死になって改革に取り組む。

大阪市立桜宮高校で体罰を原因とする生徒の自殺事件が起きた時は、入試直前だったんだけど、僕は問題のスポーツ科の入試を中止にしようとした。最初は学校自体を廃校にするとまで叫んで大騒ぎした。

※桜宮高校の体罰自殺事件については以下の記事を参照
橋下徹「なぜ相撲界の常識は非常識か」

当然、教育委員会や教育委員会事務局は入試中止に猛反対。メディアも自称インテリも猛反対。保護者や生徒からも罵詈雑言を浴びせられたね。特にスポーツ科を目指して受験の準備をしてきた子供たちやその親御さんは、「橋下憎し」だっただろうね。

写真=iStock.com/maroke

大手新聞社も社説で僕の入試中止の方針を批判してきた。テレビメディアも連日批判。関西テレビなんて、生徒を集めたインタビューを流して、生徒の切実な抗議という姿を映した。この影響は大きかったな。大阪の有権者のほとんどが、いったんは生徒の味方、橋下批判になったんじゃないかな。桜宮高校に僕が行って生徒に説明しても、生徒からは文句ばかりだった。

当初は関係者をはじめ大阪市民も、体罰で生徒が自殺した学校の恐ろしさ、というものを強くは感じていないようだった。それよりも目の前の入試を何とかしなければ、という感じだった。

違う。組織を抜本的に立て直すというのであれば、いったんその組織活動は停止にしなければならない。そしてきちんと立て直してから組織活動を再開する。

組織の立て直しの途中に、新しいメンバーを入れても、そのメンバーは昔の悪しき雰囲気の名残に浸かってしまう。