なぜ三菱電機は4年おきに社長が交代するのか

――三菱電機では、1998年から2002年まで社長を務めた谷口一郎氏以降、野間口有氏、下村節宏氏、そして山西氏と4代続けて社長が4年おきに交代しています。なぜこの4年というサイクルで交代しているのでしょうか。

三菱電機 取締役会長 山西健一郎氏

【山西】特に内規はありません。ただ、会長、社長を長くやるのはよくないという雰囲気は社内に定着しているように思います。

――任期4年では、社長は成果が出せないのではないでしょうか?

【山西】だからいいのです。4年では、任期中に目に見える成果を出そうと無理な経営に走ることはありません。「歴代社長は誰が何をやったか」などと考えないのが三菱電機です。社長の名前は知らないけれど業績はいい。それがいい会社だと思います。

――任期が短いと長期的な経営判断を妨げるという指摘もあります。

【山西】三菱電機の社長は代々、自分の任期中の成果にこだわらない分、自身のミッションは後継者の育成と考え、「次の世代で成果が出るためにはどうすればいいか?」を考えてきました。それが結果的に長期的な視点での経営判断につながり、業績を上げてきているのだと思います。

――社長任期の短さが、自身の任期にこだわらない“経営リレー”の意識を育むのですね。

【山西】経営リレーでは、次の走者だけでなく、「次の次まで」見通してバトンパスすることが大事です。その点、任期が数年程度であれば、次の次の人材を見渡しておくことが可能です。しかし任期10年で、今から20年先の人材を見渡すというのは難しいですし、現実的ではないでしょう。

――「社長任期中の成果にこだわらない」という姿勢が好業績につながったことは、非常に興味深いです。

【山西】私の体感としては、4年任期の社長が続くようになった頃から、三菱電機は「風通しのいい組織」になり、業績が伴ってきているように思います。現場が自ら問題点を見える化し、真の原因追求をして、解決策を導き出す「カイゼン活動」には、「風通しのいい組織」が大前提ですから。

――なぜ「4年任期」が契機になったのでしょうか。

【山西】企業の風通しのよし悪しは往々にして経営陣同士の関係性を反映しています。かつては事業部門の縦軸と管理部門の横軸の経営陣の間に連携はありませんでした。しかし今では縦軸と横軸の経営陣が常に連携することが当たり前です。そうした経営陣の一体感には会長と社長の役割分担が大切です。