ライバルは「脱百貨店」路線 を加速する
同業のライバルは事業構造変革で三越伊勢丹の一歩も二歩も先を走る。J.フロントリテイリングは、11月4日、松坂屋上野店(東京都台東区)の南館跡地に地上23階建ての商業施設「上野フロンティアタワー」をオープンした。ここには地上1~6階に傘下のパルコが運営する「PARCO_ya(パルコヤ)」のほか、映画館も入居しており、百貨店にこだわらないことで、客層の若返りを図っている。
J.フロントは昨年4月、松坂屋銀座店跡地に大型複合商業施設「GINZA6」を開業したばかりで、不動産事業へのシフトを強める。山下良一社長は「百貨店にこだわらず新たな息吹を吹き込む」と、「脱百貨店」の路線を一段と加速する。
三越伊勢丹HDは売上高では現在も業界最大手だが、昨年5月、株式時価総額でJ.フロントに抜かれ、百貨店業界トップの座を初めて明け渡した。現在も時価総額はJ.フロントに抜かれたままで、構造改革の遅れが響いている。
高島屋は「まちづくり」の開発事業への傾斜を強める。今年9月には日本橋高島屋(東京都中央区)を核とした新・都市型ショッピングセンター「日本橋高島屋S.C」をオープンする。重要文化財に指定されている高島屋日本橋店に隣接する専門店エリアを新設し、百貨店を中核とした売り場面積6万6000平方メートルの商業施設が都心に誕生する。三井不動産などと進める「日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業」の一角で、日本橋を魅力と活気にあふれた街にするという。
高島屋はグループで「まちづくり戦略」を推進しており、それを象徴する存在に位置付ける。昨年12月1日には武田薬品工業から日本橋にある東京本社ビルなど2物件の土地・建物を総額495億円で取得することも発表しており、高島屋の本社機能やグループ会社を集約するほか、将来的には日本橋再開発と連動した活用も検討する。
三越伊勢丹も不動産事業には取り組んでいる。今年4月には、JR国分寺駅(東京都国分寺市)北口に専門店約50店舗を誘致した新しい商業施設「ミーツ国分寺」をオープンする。しかし、急速な構造改革を断行しようとした大西前社長が残した社内の不協和音の解消と不採算事業からの撤退などリストラの同時進行という“負の遺産”の解消は茨の道に違いない。