実写版の舞台を妄想してみる

新海誠監督の『君の名は。』の舞台は、大都会の新宿と田舎の飛騨高山です。映画に描かれた新宿の街並みを見て、「僕らはこんなきれいな世界に住んでたんだ!」と驚いた人も多いんじゃないでしょうか。田舎の風景の美しさも見事でした。

それをハリウッドはどうやって実写化するか。

岡田斗司夫『大人の教養として知りたい すごすぎる日本のアニメ』(KADOKAWA)

ありがちなのは舞台をアメリカにして、ニューヨークかロサンゼルスの都会と、オレゴン州とかモンタナ州の山奥にするというところですか。でもエリック・ハイセラーはメッセージ性を入れたがる脚本家だから、そういうふうにはしないんじゃないかな。

もうこれは僕の完全な妄想ですが、実写版の舞台は「イロコイ連邦」がいいんじゃないかと思っているんです。

イロコイ連邦は、ニューヨーク州北部とカナダにまたがるインディアン部族の居留地で、Wikipediaによると「6つのインディアン部族により構成される部族国家集団」だそうです。

イロコイ連邦が成立したのは1600年代で、すごく歴史をもった「国家」です。言語も信仰も違う部族が集まり、優れた仕組みで運営を行っていました。どれくらい優れていたかというと、アメリカ建国の父の1人、ベンジャミン・フランクリンがイロコイ連邦を参考にして合衆国の運営の仕組みを考えたという説があるほどです。

イロコイ連邦は、「アメリカの原風景」であり、同時に「アメリカ人が抑圧してきたもの」の象徴です。ニューヨークやロサンゼルスのような都市とイロコイ連邦を舞台にして、それぞれに暮らす男女の話にする。そこに隕石が落ちてという話にすれば、うまく回るんじゃないかな?

もしかすると舞台は日本のままで、中国人の俳優を使ってつくるかも。あるいは舞台は中国、北京と田舎にするかもしれません。中国は農村と都市の住民は別の戸籍制度になっていて、両者のあいだにはたいへんな格差がありますから、これを描いても面白くなりそうです。

ただ、僕としてはやっぱりイロコイ連邦を推したいですね。エイブラムス監督、この記事を読んだらぜひご検討ください!

岡田斗司夫(おかだ・としお)
社会評論家
1958年大阪府生まれ。1984年にアニメ制作会社ガイナックスの創業社長を務めたあと、東京大学非常勤講師に就任、作家・評論家活動を始める。立教大学や米マサチューセッツ工科大学講師、大阪芸術大学客員教授などを歴任。レコーディング・ダイエットを提唱した『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)が50万部を超えるベストセラーに。その他、多岐にわたる著作の累計売り上げは250万部を超える。
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