「相手には相手の価値観がある」と知る
「禅の庭」をつくるときには「山是山、水是水(やまはこれやま、みずはこれみず)」という禅語を思い出します。意味は、山は山として本分をまっとうし、水は水として本分をまっとうすることにより、自然のなかで共存するということです。これを人の社会にあてはめるなら、自分には自分の価値観があるように相手には相手の価値観があり、相手を受け容れることによって、イライラや不安を感じることが少なくなっていきます。
禅の教えを体得することにより、人は苦手な相手ともうまく付き合えるようになりますし、誰とでも心地よい距離感を保つことができるようになります。そのことについては、私の新しい著作『近すぎず、遠すぎず。 他人に振り回されない人付き合いの極意』(KADOKAWA)にまとめました。ここでは著作の中から、自然と心が強くなる8つの習慣をご紹介しましょう。いずれも禅の教えをもとにしたものです。
習慣1 「いま」という瞬間を大切にする
1つ目の習慣は、「本分をまっとうし、いまを生きる」ことです。よいおこないをすれば、いい結果がついてくる「善因善果」、悪いことをすれば、悪い結果となる「悪因悪果」は普遍的な道理、真理ですが、私は、自分の本分をまっとうすることが善因だと考えています。自分がやるべきことをやる、と言い換えてもいいでしょう。
禅において、やるべきこととは、いま、やっていることです。大切なのは「いま」であるから、いま、やっていることを精一杯、心を込めてやりなさい。禅ではそのように教えます。いま、その瞬間には目の前にやるべきことが必ずあります。そのことを、心を込めてやっていく。それができているでしょうか。人生は「いま」という瞬間の積み重ねです。いまを大切にしてください。
習慣2 早起きして、清々しく充実した朝を過ごす
2つ目の習慣は、「早起きして、清々しく充実した朝を過ごす」ことです。私は、その日がどんな一日になるかは、朝の時間の過ごし方で決まると考えています。たとえば、仕事をもっている人が朝寝坊をすれば、仕事に取り組む態勢を整えることができません。出遅れ感は一日ついてまわります。反対に、早起きをすればゆとりができるため、自分のペースを保つことができます。
自分のペースを保つことができれば、心も穏やかになり、人への対応も自然体で和やかなものになります。それは、誰に対しても感謝の心をもって接するために必要不可欠となります。30分早く起きましょう。一日が確実に変わり、良縁も生まれやすくなります。