「アマゾンvs.アリババ」に対抗できる日本企業

P2Pの可能性が大きいのは、次代のビジネスの中核になると目されているブロックチェーン、クラウドソーシング、シェアリングと融合性が高いからです。ケヴィン・ケリー氏は、すでに紹介した著書の中で以下のように述べています。

「これからの30年を考えると、最大の富の源泉――そして最も面白い文化的イノベーション――はこの方向の延長線上にある。2050年に最も大きく、最速で成長し、一番稼いでいる会社は、いまはまだ目に見えず評価もされていない新しいシェアの形を見つけた会社だろう。シェア可能なもの――思想や感情、金銭、健康、時間――は何でも、正しい条件が揃い、ちゃんとした恩恵があればシェアされる」

メルカリでは、すでに「モノ領域」のフリマアプリだけではなく、「コト領域」での事業(英語レッスンなど)等も展開しています。C2Cに特化した投資ファンド事業も行なっており、私はメルカリがP2Pのプラットフォーム企業になることでメルカリ経済圏を創造していこうとしているのではないかと考えています。

私がメルカリにP2Pプラットフォーム企業としての大きな可能性を感じるのは、山田CEOが「インターネットは本来、一人ひとりにエンパワーメントを与えるもの」であることを再三強調し、個人やチームの能力を重視した事業展開に強いこだわりをもっているからです。創業4年で時価総額1000億円以上というこれまでの驚異的な事業スピードも、まさに個人とチームの強みを引き出し、ピア・ツー・ピアというフラットで新たな関係性をフリマアプリというかたちで事業化したからだと思うのです。

山田CEOの優れたトップダウン・リーダーシップだけではなく、メルカリにはボトムアップ・リーダーシップも存在しています。「文化的イノベーション」を生み出し、新たな時代の「文化ブランド」に成長する可能性も秘めています。そこに「アマゾンvs.アリババ」に対抗する新経済圏を創造する日本企業としての将来性を見出しているのです。

「超米国的なコトよりは超日本的なコト」

そして、ここで述べているようなメルカリの「アマゾンvs.アリババ」に対する競争優位が、日本企業がアマゾンやアリババと競争していく上でも大きなカギになると考えています。さらには人の仕事を奪いつつあるAIに人が競争優位をもち続けられる部分も、ピア・ツー・ピア、仲間と仲間というフラットで新たな関係性から新たな価値を生み出していくところになるのだと確信しているのです。

前述のケヴィン・ケリー氏の予測と、山田CEOのエンパワーメントへのこだわりを「掛け算」した時、私が想起したことは、「C(消費者)よりはP(仲間)」、「没個性的なモノよりは個性的なコト」「超米国的なコトよりは超日本的なコト」「超合理的なものよりは超文化的なコト」という事柄だったのです。そしてこれらの中にメルカリ経済圏や日本企業がさらに発展していく可能性を感じているのです。つまりは仲間(ピア)とのつながりが、これからのAI次代にはさらに重要になってくるのです。