欧州で働く娘に1200万円仕送り

一方、千葉県在住の男性Bさん(63歳)も、娘(29歳)が経済的自立ができずに困っている。ただ、前出のAさん宅の息子と違って、大学には真面目に通って卒業し、就職もした。にもかかわらず……。

「Bさんの娘さんはアメリカの大学を卒業後、心理学の勉強をするために欧州の大学へ再び入学しました。卒業後、心理カウンセラーの臨時職に就きましたが、月収は5万円。5万円では生活できないと訴える娘に対して親が月20万円仕送りする生活がすでに5年も続いています。娘さんは当分の間、帰国する予定はないそうです」(畠中さん)

Bさんの娘は“ワケあり”だ。実は、中学時代にイジメにあい不登校となったため、高校は通信制の学校に入学。同時に、どこか生きるのに息苦しさを感じる日本を脱出すべく英会話スクールで勉強。西海岸の大学へ渡ったのだ。年100万円程度の授業料に加え、アメリカ留学費(寮費や生活費)、その後に入り直した欧州の大学への留学費(同)、さらに仕送りを合計すると、なんと3500万円超だ。

「Bさん夫婦はすでに定年を迎え、年金や預貯金を切り崩して仕送りを継続しています。本来なら、老後資金となるべきお金が娘さんに流れてしまっている。Bさんご夫婦としては、娘を無理に帰国させても、トラウマのある日本で働けずに引きこもられるより、今のほうがマシと考えています」(畠中さん)

Aさんの息子も、Bさんの娘も、いわば「引きこもり予備軍」。もし本当に経済的自立ができなかったら親の老後計画の崩壊は必至だ。「親がお金の支援ができるのは、あと1年だけ」などと子どもに勧告すべきだ、と畠中さんは何度もA・Bさんにアドバイスするものの、ふたりとも子どもに甘い。懸命に働いて貯めた老後資金はダダ漏れ状態だ。

畠中雅子

1963年生まれ。ファイナンシャルプランナー。家計相談のほか、40代以上の引きこもりの子がいる親の相談も受ける。著書に『ミリオネーゼのマネー術』など多数。
 
(構成=大塚常好)
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