「身の回りに気を付けろ」といわれた

「ここで聞かないでどこで聞けというんですかね。苦し紛れに墓穴を掘ったのだと思います。私がしつこく質問をするので、8月下旬に菅官房長官側から、菅番の担当記者に会見時間を短縮したいといってきたそうです」
「それは突っぱねたようですが、『あと○人』『あと○問』と官邸の広報官が質問を打ち切っているのをそのまま認めています。これはメディアの自殺行為ですよ」

あなたが出した『新聞記者』(角川新書)の中で、「記者たちは私が想像していたよりもはるかに、政権側にすり寄っている」と書いている。だが、実態は権力側と一体といってもいいのではないかと、私は思っている。ほかの記者から、身の回りに気を付けろといわれたそうだが、そうした気配を感じることがあるのか――。

「内閣情報調査室や公安警察が私のことを調査し始めたという話は聞きますし、知り合いの議員に『望月というのはどんな人間だ』と聞いてきたということはあるようです。直接的に圧力をかけるようなことはせず、間接的にプレッシャーをかけるというのは、彼らがよくやる手法で汚いやり方だと思います」

彼女は日歯連の報道で某大臣から訴えられた。それは不起訴になったのだが、そのあと整理部へ異動になった。事件の現場に戻りたかった彼女は、いくつかの新聞から移籍を打診されるなかで、読売新聞へ移ろうと思い、父親に相談したという。

すると、業界紙の記者だった父親が「読売だけはやめてくれ」といったそうだ。

時の総理大臣を脅したことを得意そうに

なぜ、父親が反対したのかはわからないが、私の父も読売新聞だった。戦前からの古株だったが、子供の私によく、「読売争議(1945年から46年)の時はアカ(共産党)を追い出してやった」と自慢していた。

また、正力松太郎は新聞に自分の動向を毎日書かせて私物化し、務台光雄は大手町の国有地を読売に払い下げろ、そうしないなら新聞でお前のことをたたくと、時の総理大臣を脅したことを、得意そうに私に語った。

今のナベツネ(渡辺恒雄主筆)の横暴ぶりはいうまでもない。読売というのはそういう体質を持った新聞だから行かなくてよかったと、彼女にいった。

加計学園に文科省の認可は下りたが、安倍と加計孝太郎との癒着疑惑は解明されたわけではない。これからどうするのかと聞くと、彼女はこう答えた。

「2人の関係は、おごったりおごられたりという関係ではなく、加計氏のほうが毎回払っていたようです。獣医学部認可問題だけではなく、これまでも癒着してきた過去があると思う。まだまだ諦めません」