神殿で行われる儀式には、信者同士で行われる結婚式(死後の世界でも結婚が継続される)のほか、死者のために行われるバプテスマなどがある。特に、この死者のために行われるバプテスマは、一般的なキリスト教とは最も違うモルモン教独自の儀式だ。
バプテスマ(洗礼)はキリスト教の儀式で、入信のために行われるサクラメント(秘跡)だ。カトリックでは幼児洗礼、プロテスタントでは成人洗礼が一般的であるが、モルモン教では、すでに死んだ先祖のために代理でバプテスマを行うことができる。そのため、モルモン教の信者は先祖の情報を収集することが奨励されている。この先祖の情報はモルモン教本部に送られ、グラナイトマウンテン記録保管庫というユタ州の施設で管理される。
モルモン教会が男女問題に厳格な理由
最後に、多妻婚についても取り上げておこう。教会は1890年以降、厳格な一夫一婦主義を取り入れたことはすでに述べた。現在、モルモン教会は男女問題に非常に厳格だが、これはアメリカにおける歴史的経緯が理由なのだ。初代管長のジョセフ・スミスには40人の妻がおり、最年少の妻は14歳であった。そのことをモルモン教会が正式に認めたのは2014年のことである。
現在でも、モルモン教に関して取り上げられる事件で、多妻婚に関するものがある。モルモン教会は認めていないが、モルモン教分派に分類されるFLDS(The Fundamentalist Church of Jesus Christ of Latter-Day Saints)という宗教団体がある。彼らは19世紀前半のモルモン教の教えを忠実に守り、今でも多妻婚を行っている。2008年には指導者のウォレン・ジェフスが14歳の少女と結婚を行ったとして指名手配され、12人の信徒が重婚や未成年者に対する性的行為の容疑で起訴された。こういった事件と結び付けられることを、モルモン教会は特にセンシティブに感じているのである。
このように、斉藤由貴が不倫問題でバッシングを受けた際、彼女自身が除名を申し出たのは、モルモン教の持つ歴史的経緯によるものであるというのは想像に難くない。モルモン教会が男女問題に非常に厳格なのは、多妻婚という歴史があったからなのだ。