資産3500万円は夫87歳の時に底をつく
結論から言えば、久住家の老後資金は十分足りると考えられる。夫妻が受け取っている年金は月額で約20万円。現在の家計では約12万円足りず、年間で143万円不足する。不足分は資産を取り崩して賄うことになるが、夫妻には退職金を含めて3500万円の資産があり、単純計算で言うと24年分の不足額が賄える。夫が87歳のときには底をつく計算だが、年齢を重ねれば食が細くなって食費も減るし、マイカーも不要になって車関連費もかからなくなる。医療費や介護費がかかるとしても、支出は減り、90代まで資産はもつだろう。
とはいえ、「なんとかなる」程度では悠々自適な老後を過ごすことはできないし、重い介護状態になったときには介護施設への入居も考える必要がある。それらを考え合わせると、資産を取り崩さず、資産を運用しながら増えた分を使う、という方法をとるのが望ましい。
適した投資先として挙げられるのはリート(REIT/不動産投資信託)と高配当株である。リートとは投資家の資金で複数のオフィスビルなどに投資し、その賃料収益が投資家に配当金として支払われるもの。数万円から投資でき、大家さんのように収益を得ることができるわけだ。株式と同じように売買でき、銘柄によっては利回りが7%台の例もある。高配当株とは、株価に比して配当金の額が多い株式(銘柄)のことで、日産自動車が4.62%、積水ハウスが3.82%、三井住友フィナンシャルグループが3.66%など、大手企業でも3%台、4%台の例が少なくない(7月7日終値による)。
60代で3500万円の貯蓄があれば、500万円は貯蓄に残し、3000万円をリートなどに投資する。年間5%で運用できれば、年間で150万円、月額換算で12万5000円のキャッシュフローが生まれる。つねに5%で運用できる保証はないが、計算上では収益だけで年金で不足する分をカバーできる。
ただし、投資には値下がりのリスクが伴い、株価が下がって投資元本が目減りしたり、収益が減ったりする可能性もある。少しずつ投資資金を回収する(リートなどを売って預金で安全を確保する)のもいいだろう。銘柄が選べない場合は、国内のリート指数に値動きなどが連動するETFを選択肢に加えるといい。私もETFに投資している。