多くの人は、ただ知るだけ、外界からの刺激に感情的に反応するだけ、ということがほとんどです。ただ単に読むだけ、覚えるだけ、「けしからん」と反発するだけ、なるほどと納得するだけのほうがラクだからです。

午堂登紀雄著『人生の「質」を上げる 孤独をたのしむ力』(日本実業出版社)

しかしクリエイティブな人間やイノベーションを起こせる人材は、その刺激を加工・応用し、発想や自分の行動を錬磨するべく内的作業をする思考のクセがあります。

それは「こうかもしれない」「こういうこともありうる」と、外側の世界を自分内部の思考の枠組みに引き寄せ、その中で理解し創造しようという試みです。

そしてそうした思いつきに似た仮説を、現実と照合し検証し、作品として世に問うのです。

いわゆるビジネスの現場で活用されているブレインストーミングやディベートも、他人がいなければできないのではなく、この作業をひとりで繰り返しているのが優秀なクリエイターです。

つまり自分の中に独力で場をつくり、その思考の場の中で複数の違う自分を立ち上がらせて、相互にディスカッションできる人こそが、次々と問題解決策を思いつき、独創的なアイデアを紡いでいけるのです。

孤独の中の創造力が『進撃の巨人』を生んだ

たとえばマンガ『進撃の巨人』。独特の世界観と随所にちりばめられた伏線の数々が多くのファンを引きつけ、2017年初頭でコミック単行本の累計販売数は6300万部を超えるヒットになっています。

しかしこの原作者である諫山創(いさやま・はじめ)氏が『進撃の巨人』を最初に描いたのは弱冠19歳のころだそうです。

そんな彼は暗い学生時代を過ごしたそうで、自らを「非リア充」と言うなど、やはり孤独の中で創造力を育くんできたのだと思います。

そういえば、『孤独の発明』(新潮社)を書いたポール・オースターは、「孤独が人間の全能力を引き出す」と述べていますし、「ローマ帝国衰亡史」を書いたイギリスの歴史学者ギボンも「孤独は天才の学校である」とも述べています。