自分自身に焦点を当てないようにする
これらのテクニックはすぐに現場で使えるが、「行動分析はあっという間にさびつくスキル」ということなので、つねに技を磨く努力が欠かせない。
さて、相手の心を読む技とともに、シェーファー博士は、人に好かれるテクニックも指南している。ビジネスパーソンがこれを学ぶことには、どのようなメリットがあるのだろうか。
「相手に好意を持ってもらうことが、仕事を完遂させるためのカギです。世界のどこでも、いかなる年代のどのような地位の人に対しても、100%通用する『黄金の法則』があります。それは相手をいい気分にさせること。そうすれば相手はあなたを好きになり、助けてくれます」
それほど確実な「黄金の法則」だが、世界は自分を中心に回っていると考える人が多いため、この法則の威力に気づいて実践している人は実は少ないのだとシェーファー博士は指摘する。
「自分自身に焦点を当てないようにすること。それが成功の秘訣ですよ」。
▼まだある! 自分を好きになってもらうためのサイン
18. アイコンタクト
相手に「好意シグナル」を送るには、ほんの一瞬目を合わせるようにするとよい。1秒以上見つめると「敵意シグナル」と受け止められ、逆効果になってしまう可能性がある。相手に警戒されないようにするためには、微笑みながらアイコンタクトを送るようにしたい。あなたがアイコンタクトをしたあとで、その相手が一瞬目をそらし、目線をいったん下に落としてからアイコンタクトを返してきたら、自信を持って近づいても大丈夫だ。
19. 体の近さ
信頼関係を築きたいと思う相手に対しては、つい体を近づけてしまうものだ。反対に、苦手な人とのあいだには距離を置こうとする。話している人たちの距離を見ていると、そのふたりがこれから親しくなっていくのか、あるいはすでに親密な関係にあるのかなどが判断できる。あなたが身を乗り出しても相手が上半身を反らさなければ、拒絶されていない証拠だ。逆に、その人の足先があなたとは別の方向に向いていたら要注意だ。
20. 大げさな身振り
身振りを大げさにして表情豊かなジェスチャーを見せると、言葉によるコミュニケーションの力が強まるので、相手から好意を持ってもらうことができる。親しくなりたいと思う相手に対しては、深く頷いたり微笑んだりして、熱心に話を聞こう。身を乗り出したり、頭をわずかに傾けたりするのも効果的。ただし、あまりにも頻繁に頷くと急かしていると誤解されてしまうので、「よい聞き手」として認識してもらえるように、適度にやろう。
21. ときおりミスをする
わざと文字を読み間違える、字を誤るなど、自分の信用が傷つかない程度の小さなミスを、ときおりあえて犯してみよう。そして、間違いを指摘されたらちょっとバツが悪そうな顔をして、正してくれた人に対してきちんと指摘してくれたことに礼を言うのだ。すると、その人はとてもいい気分になるし、あなたに対して親しみを抱くようになるだろう。ときおり些細なミスをするような人には人間味が感じられ、相手はより好感を持つようにもなる。
元FBI特別捜査官。現在は心理学者、ウエスタンイリノイ大学教授、諜報コンサルタント。FBIではスパイ防止活動とテロ対策の捜査官を15年、行動分析プログラムの行動分析官を7年務めた。著書に『元FBI捜査官が教える「心を支配する」方法』。