受験は仕事におけるプロジェクト・マネジメントと同じ

勉強に関しては自学自習が基本。息子たちの中学受験の際も、塾に通わせたのは小6の1年間だけだった。あくまでも自発的に取り組ませ、「勉強しなさい」と言ったことは一度もなかったと振り返る。

「受験というのは、ビジネスにおけるプロジェクト・マネジメントと同じです。プロジェクトを部下に託すときには、目的、期日、達成すべき結果などを明確にしますよね。受験の場合も、なぜ受験をするか。いつまでに、なにをすべきか、といったすり合わせを通塾する前に念入りにしました。親子でしっかり話し合い、共通認識が持てたなら、あとは子供の主体性にまかせる。実際、子供たちはいつまでに、どの科目を、どこまで進める、といった学習計画表を自分でつくり、それに沿って受験勉強をしていましたね」

親がするべきなのは、進捗状況の確認と困ったときに相談にのれる体制をつくること。勉強に関する相談も、もし自分で考えることなく「ここ、教えて」と言ってきたら即却下。「自分はこう考えるが、どうしても理解できない」というようなときにだけ教えるようにしていたそうだ。

間違いを二度してはいけない。敗因分析をしっかりする

「結果があまりよくなくても、とやかく言うことは一切ありませんでした。テストの点数がよくなかった場合はその事実を確認して、『君のやり方が間違ってたんだね。次は別のやり方でトライしてみようか』と言葉をかけるぐらい。『だから言ったじゃない』『駄目じゃないの』というような、否定的な言葉を投げつけたら、萎縮してよい影響は与えない。親子の心が離れて、こちらがなにを言っても聞く耳をもたなくなるということもありますから」

このように、「自律」と「自立」を促せるよう、子供主体の受験体制をとってきた大岸さんだが、2つだけ子供に約束をさせたことがあるという。

ひとつは、同じ間違いを二度してはいけない、もうひとつはわからない問題があっても3日間は考え抜く。

「一度の間違いは誰にでもあること。特に気に留めません。ただし、二度目は注意をしました。敗因分析が甘かったのか、分析後の修正がきちんとできていなかったのか。ビジネスと同じでそこをきちんと見極めないと、別のところでも同じことが必ず起きます」

同じミスを繰り返さないよう、自分が学生時代に実践していた間違いノートづくりを子供たちに勧めたこともあった。ノートの左側に間違った問題を切り貼りし、右側で解き直してフィードバックを書き入れる。ビジネスで言うところのPDCA(Plan・Do・Check・Act)を、子供自身に行わせていたわけである。