人生はゲームのバトルと同じ「必要なのは盾と剣と……」

一方、「3日間考え抜く」という約束は、物事の本質や根本原理を理解する力を養うために課したものだ。

「すぐに答えを見て多くの問題を解いたほうが受験には有利かもしれませんが、私が見ているのはもっと先。例えば、『この商品は売れるか』という判断をするには、物事の本質や原理を見極める目が必要になるんです。それに、3日考えて解ければすべては自分の力であり、大きな達成感と自信が得られますよね」

こうした話からもわかるように、大岸さんの子育てはすべて長期ビジョンのもとに成り立っている。目先のテスト、目先の受験にとらわれるのでなく、その先に続く子供の人生を見据えて育て方を考え、またそれを子供たちにも伝えてきた。

盾と剣を使う戦士自身の体と心も鍛えよ

それは、母親から息子たちへ送る人生の“哲学”だ。

「小学生のときに話したことのひとつは、大学生になったら親の手を離れ、自分で戦い抜く力をつけないといけないということでした。子供たちが大好きなゲームをたとえに使って、人生はバトル場だと教えました。そこで戦う戦士は、盾と剣を持っていますよね。盾はいうなれば卒業大学や資格など、剣は大学以降に身に着けた知識、スキル、能力などの専門知です。盾と剣がより優れているほどバトルに有利なのは事実ですが、それらの道具を使って戦うのは戦士自身です。つまり、戦士の体と心を子供のうちから鍛えておかないと戦いに勝てないし、強い体と心があればより強力な盾と剣を手に入れられると伝えてきました。最低限しか塾に通わせなかったのは、体と心を鍛えずに盾ばかりを大きくしてもしかたがないと思ったからなのです」