これから日本には誰も経験したことがない「超高齢化」が訪れる。そのときどんな変化が起きるのか。これまでの歴史を振り返りながら、「衰退期」に向けた家計の備え方を解説する。第5回は「住まい」。多くの人は「自宅は資産になる」と考えているようだが、2040年までに日本の住宅価格は3分の1程度まで下がる恐れがある。価格下落を踏まえた望ましい選択肢とは――(全6回)。
「長寿リスク」に備えるためには、資産を増やすことだけでなく、資産が減るリスクについても備えておく必要がある。
この10年、都内のマンションは「ミニバブル」にある。図1をみると、2004年4月から反転し、2016年5月までに1.7倍に上昇している。今後もこうした住宅価格の上昇は続くのか。そして、自宅は老後の資産として頼りになるのだろうか。日本大学の清水千弘教授は「日本の住宅価格は3分の1程度まで下がる恐れがある」と話す。
「私たちの研究では、住宅価格は『老齢人口依存比率(生産年齢人口に対する65歳以上人口)』と相関することがわかっています。図2と図3は、自治体別に2010年から40年までの住宅価格の変化を試算したものです。人口流入が少なく、高齢者の比率が高い地域ほど、住宅価格の下落が見込まれます」
図2の大阪府では、泉佐野市だけが「0.45以上」、つまり半額程度までは価格が維持されると試算されている。一方、郊外の寝屋川市、枚方市、河内長野市などは「0.3未満」で、住宅価格は30%以下になると予想されている。2010年に3000万円で購入した物件であれば、2040年には900万円以下でなければ売れない、ということだ。
図3の東京都では、大阪府よりも価格が維持される「緑色」の地域が多いことがわかる。特に、江東区、墨田区、荒川区、北区といった東京東部は「0.45以上」で、価格が底堅い。一方、練馬区や杉並区は23区のなかでも珍しく「0.3未満」と見込まれている。これは2区の高齢者比率の高さが影響している。
これから住宅を買うのであれば、「老人ばかりの街」ではなく、「子供が多い街」を選んだほうがいい。その選択が、あなたの老後のゆとりを左右することになる。