北朝鮮情勢は景気動向に大きな影響を与えず

もう一つ興味深いのが、BREXITによる景気への影響が大きいと人々が考えた(ゆえに登場頻度が大きかった)ことには、資産市場の変動も関係していたことを、今回のテキストマイニングの結果が示唆している点だ。資産価格に関わるキーワード(「円安」「円高」「株高」「株安」など)の登場頻度を見ると、北朝鮮情勢への懸念が高まった今年の4月前後では低位に安定しているのに対して、BREXIT決定のタイミングでは、「円高」の登場頻度が大幅に増加したほか、「株安」、「株価」の登場頻度も増加している(図表5)。ちなみに、Nグラム分析の結果を見ると、BREXITのタイミングで「株価」の前後に登場する単語は「下落」「低迷」がほとんどで、「株価」はネガティブな方向性を示す意味で使われていた。

同様に、人々の不安に関わるキーワード(「不安」「不透明」「懸念」「心配」など)の登場頻度を見ると、BREXITのタイミングでは現状/先行きのいずれのコメントにおいても大きく増加したのに対し、北朝鮮情勢への懸念が高まったタイミングでは、現状のコメントにおいて小幅増、先行きのコメントにおいてはほぼ横ばいであった(図表6、7)。

以上のことから、景気ウォッチャーのコメントをテキストマイニングした結果から判断すると、昨年の春以降、BREXITに伴う資産市場の変動が人々の不安心理を高めたが、その後、資産市場の安定とともに人々の不安心理は和らぎ、景気は持ち直しへと転じた。今年に入り、北朝鮮情勢は緊迫したが、資産価格の大幅な変動を伴わなかったこともあってか、人々の不安心理をそれほど高めることはなく、結果として景気動向に大きな影響を与えるものとはならず、景気の堅調な状況が続いているということになろう。