防衛省「日報」問題、現地が危険ならなおさら公開すべき

今、東アジアの安全保障上の環境が、日本にとって厳しいものになってきている。このような状況で、日本の防衛力を高めるべきだという声が強まっている。僕も日本の防衛力は高めるべきだという考えだ。

ただ大前提として、政府が常に事実を正直に明らかにするということが絶対的な必要条件になる。先の大戦で、日本政府は日本に有利な事実しか出さず、不利な事実は隠し、むしろ日本に有利な虚偽の事実を作り出して国民全体を騙して負け戦を遂行し続けた。そして対外的にも国内的にも多大な損害を与えた。

軍事力の行使において最も重要なことは、政府が事実を国民に対し正直に出すこと。その事実をもって国民が最終判断できるようにすること。

そこで問題なのが防衛省の日報問題だ。それが発覚すればPKOの派遣が批判されることになるだろう南スーダンの「戦闘」の事実が記載された日報を、防衛省が組織ぐるみで隠したことは、これは大問題なんだよ。このような防衛省・政府の事実隠蔽体質が改まらない限り、日本の防衛力を高めることは危険だね。

また自民党議員は、現地の日報にはマル秘情報が含まれているので公開すべきものじゃない、なんてことを言い出している。でもオランダは「PKOの現地の情報をありのまま国民に提供しよう。そのことによって国民の感情が揺れるようなことがあったとしても全てを開示しよう。その上で国民に判断してもらおう」と徹底している。PKOの現地が危険な状況であればなおさらその情報は国民に提供するらしい。僕はこのオランダの姿勢に賛成だ。

今回の安倍さんの謝罪・反省の姿勢を見て、国の最高権力者が、国民の怒りを買ったことによって謝罪・反省をするという社会がどれだけ安心な社会かを実感した。ほんと日本っていい国だなと感じたね。

中国や北朝鮮、ロシアでこんなことがあるのか。中東やアフリカではどうなのか。このような国では、最高権力者が国民に頭を下げるどころか、権力を行使して、力づくで国民を抑え込むのが現実なんだから。

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.67(8月8日配信)からの引用です。もっと読みたい方は、メールマガジンで!! 今号は《[超実践・危機管理講座]内閣改造!支持率回復のための具体策はこれだ》特集です。

(撮影=市来朋久)
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