国籍の有無と国への忠誠心は別ものだ!

日本は法律上、二重国籍者が立候補することも政治家をやることも禁じていない。民進党の蓮舫代表が「二重国籍じゃないか」と騒がれたけど、仮に二重国籍であったとして蓮舫さんは法律上国会議員を失職しなければならないわけではない。

僕は二重国籍者でも「有権者がそれでいいと言うならいいじゃないか」という立場。有権者の判断に任せるという考え。いつものように「それはポピュリズムだ!」と批判されるだろうけどね。さらに二重国籍を飛び越えて、僕は外国人が政治家になってもいいじゃないか、とも考える。

その一方、有権者には日本国籍を求める。「選挙権には日本国籍を求め、被選挙権には日本国籍を求めない」という僕の持論は超少数説だろう。日本維新の会の戦略会議でも却下されちゃったけどね(笑)。被選挙権に必ずしも日本国籍を求めないのは、有権者の判断を徹底的に信用することと、今の日本の政治家のレベルを見ると外国人の力も借りないといけないかなと感じているからだ。

僕も国籍の重要性は否定しない。国籍がなければあらゆる社会制度が成り立たない。納税、行政サービスの提供、国家による国民の保護などなど。国家に対して権利を主張できる者とそれと表裏一体とのものとしての責任を負う者を明確化する意義。ある意味、人間に与えられた背番号、ID番号のようなものとして国籍は重要な意義があると考える。

だけどそれを超えて、国籍がその国への忠誠心を表しているかといったらそれは違うというのが僕の考え。

日本国籍を持っている者だって、日本を愛していないものもいるだろう。日本国籍を持っていても日本にとって悪いことをする者だってたくさんいる。逆に日本国籍を持っていない人でも日本を愛して、日本のために貢献してくれている人もたくさんいる。

国籍に実体的な価値を認めず、あくまでもID番号的に手続き的な意義だけを認めるのが僕の考え。

だから国籍のあるなしで日本への忠誠心を確かめようなんていうのはナンセンスだ。ましてや日本国籍を持っている二重国籍者について、日本に不利益な行動をするかもしれないと抽象論で語るのもナンセンスだ。

二重国籍者は日本の政治家になるべきではないという考えの人は、日本と、もう一つの国籍の国の利益が究極的にぶつかった場合に二重国籍者はどちらの国のために働いてくれるのか分からない、という。でもそれは国籍の有無、二重国籍かどうかに関係ない。

日本の単一国籍者であっても外国のために働くスパイはたくさんいる。国籍が二重である者と、外国人から日本人に帰化した者を比較した場合、国籍が日本単一である帰化者だけが信頼に値するのか。日本国籍を絶対視する者は、かえってオメデタイ人になってしまう危険がある。日本国籍さえ持っていたらその人を絶対的に信用し、日本国籍者のスパイを見抜く力がなくなっていくだろう。

さらに二重国籍者が信用できないとなれば、帰化者についても信用できないという話にもなりかねない。その国への忠誠心なんて、その人の心の中の本当のところは他人に分かるわけがない。最後はその人の現在の言動で判断するしかない。国籍を絶対的な指標とすると、その人の現在の言動から信用に値するかどうかを評価する自分の目を曇らせる。

僕は二重国籍者を超えて、外国人にだって日本の政治家になってもらっていいと考える。有権者がその人を日本のためにしっかりと働いてくれると見抜いて選んだのであれば、その方がかえって日本のためになるんじゃないか。今の硬直化した日本の社会制度に活を入れるアイデアは、むしろ外国人の方が持ち合わせているかもしれない。そういう助っ人外国人に日本の政治を一時委ねてもいいんじゃないか。もちろん外国人に認めていいポジション、ダメなポジションがあるだろうが、それは制度の作り方の問題。

そしてその外国人政治家が日本の利益に反するようなことをすれば選挙で落とせばいいんだし、選挙前でも解任手続きを定めておくことで対応できる。これも制度の問題だ。

ただし、日本という国に将来にわたって権利と責任を負う者が日本の政治行政を最終的に決めることは当然だと思う。ゆえに日本国籍保有者が有権者となり選挙権を持つ。外国人が日本において有権者となりたいのであれば、帰化してもらえばいい。このように有権者には日本国籍という参加資格を求める。これは日本国籍保持者が立派な人間だから、その国に忠誠心・貢献度が高いからというわけではなく、あくまでもID番号的な参加資格。

さらに行政権限を行使する公務員についてはどうだろう? ここは選挙ではなく試験で選ばれる領域で、有権者による選別が入らない。ゆえに公務員の世界では国籍を重視すべきと考える。もちろん公務員の世界でもポジションによっては外国人を認めているけど、あくあまでも原則は日本国籍保有を求める。さらに外務省職員は二重国籍はダメだけど、それも仕方がない。有権者によるチェックが入らないからね。

このように、被選挙権に日本国籍は求めない、選挙権には日本国籍を求める。僕のこの持論は選挙による有権者の判断に信頼を置く考えが土台となっている。日本国籍に実体的な価値を認めるというよりも有権者のチェックに晒されるかどうかを重視している論理。だからこそこの考えは、有権者がきちんと選択・チェックできるように、立候補に際し、外国人であること・二重国籍であることをしっかりと明示してもらうことが絶対的な条件となる。

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.63・64(7月18日配信)からの引用です。もっと読みたい方は、メールマガジンで!! 最新号vol.65(7月25日配信)は特別編集《橋下徹のお気に入りレストラン#1》です。

(撮影=市来朋久)
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