時代を読むためには頭を使った読書をするべきだ
日本のビジネスマンは、よく勉強している人でも、実は業務に関係する情報を拾い読みしているだけになっていることが多い。私もNHKに勤務しているときはそうだった。しかしそれでは、日常の疑問を解決する程度の、いわばフローの情報しか身につかない。物事の本質を理解し、将来を予測するには、普段から多少学問的で、いわば自らのストックとなる本を意識して読むべきだ。
サブプライム危機直前に原著が発売された『ブラック・スワン』は、昨今の金融危機を予告していた稀有な本だ。経済危機を引き起こすのはヘッジ不可能な不確実性であり、それを回避する難しさと金融工学の限界を示唆している。多少難解なところもあるが、金融危機を理解するためには、最低でもこれくらい歯応えのある本を読む必要がある。『10万年の世界経済史』は、数量経済史を扱った本だ。人口動態で、10万年という大きなスケールで歴史を分析しようと試みている。人口ですべてが説明できる、という結論には賛成できないが、試みは非常に興味深い。『個人主義と経済秩序』は市場の本質を突いた本だ。最近は、米国型の市場主義経済の功罪に関する議論が盛んである。市場万能主義からの「転向」を表明する経済学者まで現れている。しかしこの本を読めば、そういった議論のほとんどが、フローの情報に基づく浅い議論にすぎないということがわかるだろう。