秋は、食欲の季節。同時に性の季節でもあるという。
「食欲モリモリの人は、あっちもバリバリ。食生活と性生活は連動しているんですよ」
セックスレス、草食系男子……。現代の萎えた男たちをなんとか助けてあげたい。そんな義侠心から食文化論者の小泉武夫さんが筆を執った。
カツオ節、納豆、ニンニク、カブトムシの串焼き、オットセイのペニス、カマキリの卵……。ふだん食卓にのぼる食材からゲテモノまで。あらゆる「絶倫食」を平らげてきた小泉さんが、医学的な根拠や古今東西の文献をひもときながら、下半身に効く食材や料理を紹介していく。
「古くから人間は元気でいるためにすさまじいほどの努力と研究を重ねてきました。たとえば、明朝時代の中国の皇帝は、童の小便を呑んでいた。少年の尿には、ステロイドホルモンやクレアチニンといった強精強壮成分が含まれている。絶倫食は、馬力食。ポジティブに生きるための基本といえるのです」
いつまでも強くいたい――。その願いは、古代の皇帝も現代の男たちも変わらない。色を好んだ英雄がエネルギーに満ちていたのならば、上司も萎えている場合じゃない。馬力がなければ仕事もできない。性と仕事。人生の活力となるのが、絶倫食なのだ。
ただし、強精成分のある食材を食べさえすればいいというほど単純な話ではないという。
「大切なのは、心や自己暗示。夜、がんばってもらいたいと、新婚の若い奥さんがレバニラ炒めを作って旦那さんの帰りを待つ。それだけで盛り上がってきませんか。サプリメントを飲むよりもずっと効果があるはず」
食も性も五感で味わうもの。それが小泉さんの持論だが、本書も五感を刺激する。〈乾燥した保夜(三陸海岸の名産・ホヤ)は、やや淡紅色あるいは桜色、鴇色を帯びた赤黄色で(略)特有の甘酸っぱさというか、美女特有の肉感的温もりをもった芳香がして参ります〉
小泉さんは、「プレジデントの読者にだけ特別に」と手軽な絶倫食を教えてくれた。夕方、空腹時にチビリチビリと日本酒を呑む。肴はサッと炙ったスルメ。スルメに豊富に含まれる精子の主要成分のひとつアルギニンというアミノ酸を効率的に吸収できるわけだ。
「すぐに下半身がムクムクしてきますから。一度、その経験をすると暗示でスルメを炙った匂いだけで効くようになります。“たちあがれ日本”ですな(笑)」