いかに気持ちよく断られるか――。そんな自虐的な望みに心を砕いた時期があった。

学生時代、私は公認会計士になる勉強をする学費を稼ぐため、教材セールスのアルバイトをしていた。具体的にいうと、一般家庭を訪問して、子ども向けの教材をセールスする仕事だ。上司の説明では、「たくさん回るほど売れる。200軒回れば、下手なセールスでも一件は契約がとれる」ということだった。

実際にインターホンを押しても、会ってもらえる確率は1割程度にすぎない。居留守を使われるのは日常茶飯事である。インターホン越しに「帰れ!(当時問題になっていた)豊田商事か」と、怒鳴られることも度々だった。

(高橋晴美=構成 ライヴ・アート=図版作成)