世界中のインターネットを、「フェイクニュース」というウソの情報が駆け巡っている。もちろん日本も例外ではなく、「キュレーション」を名乗るデマサイトが依然として生き残っている。インターネットにデマがはびこっている現状を、「ワールド・ワイド・ウェブ」の生みの親はどう考えているのだろうか。朝日新聞記者・平 和博氏が出版した『信じてはいけない――民主主義を壊すフェイクニュースの正体』(朝日新書)から抜粋して紹介する。

ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)の発明者、 ティム・バーナーズリー氏は、2017年3月12日、「発明者によるウェブの三つの課題」と題したメッセージを、自らが創設したワールド・ワイド・ウェブ財団や英ガーディアンに公開した。

WORLD WIDE WEB FOUNDATIONのサイトより

1989年3月12日は、当時、スイスの欧州原子核研究機構(CERN)にいたバーナーズリー氏が、ウェブの仕組みについて最初に提案をした日付。つまりウェブの誕生日だ。

28歳を迎えたウェブの誕生日にバーナーズリー氏が投げかけたのは、その現状に対する懸念だった。ウェブの設計思想は、それぞれ異なったコンピューターに散在する情報への、オープンで多様なアクセスを可能にすることだった。だが28年後、その設計思想は危機に瀕していた。

バーナーズリー氏があげた「三つの課題」の第一は、「私たちは個人データのコントロールを失ってしまった」ことだ。

<私たちがウェブサイトを利用する時、その閲覧履歴のデータは、ネット企業の内部に蓄積されていく。ユーザーがそれをコントロールすることはできない。そして、それらは専制国家においては、国民監視のツールとして利用される危険性すらある。>