現在、避難している方々がいつ家に帰れるのかについては、事態が流動的であり、事故が収束しなければ何とも言えない。ただ、放射能汚染は風向きが影響するため、同心円状に広がっているわけではないことに注意が必要だ。今後、環境モニタリングが行われ、その結果により順に安全宣言が出されていくと思われる。

では、30キロ圏内でも原発に近く、事故の影響が大きい地域はどうか。セシウム137の半減期は30年だが、ウオッシュアウト(雨などが放射性物質を捕捉して降ること)もある。チェルノブイリと違い、日本は地形上平地に水が溜まりにくく、水はけもいい。雨が一つのキーワードになりそうだ。

半径30キロ圏内で生産された農作物に関しては、暫定基準値を超えた農作物の出荷はすでに止まっているが、放射性物質がなくなり汚染が収まれば当然出荷される。そもそも汚染は土壌の表面であり、中のほうに入っていくものではない。問題なのは汚染のレベルとなる。農林水産省や環境省などが、土壌の安全検査を進めていくだろう。国の安全宣言が出た場所で育ったものについては心配無用だ。

海洋汚染についてはほとんど心配していない。汚染地域周辺で育つような魚介類などはモニタリングの必要性があるが、放射性物質は基本的に急速なスピードで拡散するので、汚染のレベルそのものが下がっていくものと期待している。ただし、高汚染物質が今後、継続的にどの程度流され、そのうちどの程度が回収されるのかはチェックしておくべきである。

なお、首都圏への影響は、過去も、現在も、また将来においても、全くないと言い切っていいだろう。一時的には放射性物質が観測されたが、それは幅広く拡散したから、当然ありうること。だからといって、健康に影響するようなことはない。加えて、過去の汚染が残っているわけでもなく、放射性物質から出る放射能の自然減少や拡散によって消えていく。チェルノブイリで調査した経験からいうと、現状は何の問題もない。

(構成=相馬留美)