コヴィーの教えに感動したけれど実践はしない人たち

たとえば、「習慣1:主体性を発揮する」。

この章は、仕事であれプライベートであれ、自分がコントロールできること・できないことを区別し、自分が何か影響を与えられるできることに集中しようという考えを述べています。

顧客に営業活動を行った結果、受注できるかどうか。その決定権は顧客側にあります。相手の領域なので自分ではコントロールできません。でも、どのような提案をするかは自分の領域です。この領域を明確に区別して最善の努力をすることを奨励しています。

では、「私は仕事で主体的に行動しています!」という人は、この「習慣1」を実践できていると言えるでしょうか。答えは、ノーです。

コヴィーは、仕事の環境、人間関係、突然の出来事など、人生で突如降りかかるあらゆる問題やトラブルに対して、「コントロール不能」の領域には固執せず、自分の"影響の輪"に集中するというマインドを保ち続けることが重要であると説いています。

多くの人はコヴィーの教えに「なるほど」と思うはずです。しかし、実際には教え通りにはできません。

頭では理解しても、心では理解していないのか?

その典型例は「日々の残業が減らない」というテーマで考えればよくわかります。「長時間残業を奨励する風土がわが社にあるせいだ」「上司が遅くまで残っているせいだ」「そもそも仕事量が多いからだ」……。そうやって被害者の立場で考える人が多いのではないでしょうか。

会社の社風や上司はどうであれ、自分の段取り・時間活用の工夫をすることで、自分のできる範囲で30分でも残業を減らしていこう、効率を少しでも良くしていこう。そうした行動がいわばコヴィー流なのです。

また、部下が育たないと嘆く上司は多いものですが、「では、どう育成を工夫していますか?」と聞くと、ほとんどの人が言葉に詰まってしまいます。嘆くことに終始し、あまり対策を考えていないのです。自分がコントロール可能な領域に真摯に取り組まず、コントロール不可能な領域(例:部下が育たないこと)のことについて思い悩んでいるのです。それは、エネルギーと時間の浪費と言わざるをえないでしょう。

一般的に「習慣」というと、早寝早起き、禁煙禁酒、1日30分以上の運動といった特定の行動をイメージしがちです。しかし、コヴィーが語る習慣は個別案件のことではなく、まさに「心のあり方」「気持ちの持ち方」レベルに昇華できるかどうかがポイントになります。

あり方に昇華させる。これは相当に難易度の高い取り組みです。しかし、もしそれを実現できたなら、その"効果"は自分の人生全体に及ぶ、劇的な変化をもたらすことは間違いありません。