創業40周年を超え、マニアックな音楽好きから愛されるレコード会社が、下北沢にコンビニをオープンした。セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの3強がシェアを占める市場に、畑違いの業種からどう挑むのか? 

老舗レコード・レーベルが、コンビニ業界に参入した。場所は東京・下北沢。サブカルチャーの街にできた新しいコンビニの名前は、「nu-STAND」という。

5月9日にオープンしたこの店を経営するのは、創業40周年を超えるレコード会社「Pヴァイン」だ。Pヴァイン・レコードは、ブルースやヒップホップ、ファンクなどを中心に「オルタナティブ・ミュージック」と呼ばれる音楽を手がけ、日本におけるインディーズ・シーンの草分け的存在として音楽好きの間で知られている。

寡占状態の市場に乗り込んだ理由

コンビニ業界は今、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートの3社が市場を占め、当面この状況に変化はなさそうだ。なぜそんな業種に、レコード会社が参入したのだろうか? Pヴァイン・レコード代表取締役社長で、現在「nu-STAND」の店頭に立つ水谷聡男氏はこう語る。

「2016年の12月で、会社が40周年を迎えたんです。そのタイミングで、音楽以外の新しい事業をやりたいと考えていました。Pヴァインの強みを生かして、ライブのできるカフェや飲み屋というのも考えたのですが、それではお客さんがこれまでとあまり変わらない。悩んだ結果、もっと日常に近い存在で、Pヴァインのモットーである『THE CHANGING SAME(変わりゆく変わらないもの)』を表現できるのは、コンビニなのではないか、と」

参考にしたのは、レコード・レーベルらしくニューヨークの食料雑貨店だという。

「『グローサリー&デリ』と呼ばれる、食料品と雑貨、お店のお兄ちゃんがつくった調理済みの食品が置いてある店を見て、『これだ!』と思いました。ですが、『グローサリー』という言葉はまだ日本ではあまり浸透していません。これを打ち出した場合、音楽やファッションが好きな人には届いても、街中を歩いている近所のおばあちゃんやおじさんには届きづらくなる。そういう理由で、カタカナの『コンビニ』を名乗っています」