16年4月に新規事業部が立ち上がり、そこから半年かけて親会社のスペースシャワーネットワークに中長期事業計画を提出。10月から具体的な店舗作りに入っていった。だが、音楽とはまったく畑違いの領域で、当初は苦戦を強いられる。
「どこから物を仕入れればいいかもわからず、ネットを検索して出てきた卸業者さんに1カ所ずつ当たっていきました。だけど業者さんたちはPヴァインなんか当然知らないし、まして店舗もまだできていない状態では門前払いが当たり前。一緒にnu-STANDをやっている社員も僕も営業出身なので、少しずつ交渉で突破していきました。レコード会社としては知らなくても、40年間営業してきた会社という点で信用をいただいて、最終的には契約を結べました」
本業と相通じる「オルタナ・カルチャー」という感覚
店内の棚には、苦労して仕入れた数々の商品が陳列されている。普通のコンビニで売っているような日用品や食料品、飲料に加えて、特徴的なのは惣菜コーナーだ。カット野菜をセルフで組み合わせる形式のサラダバーのほか、「手作りメンチカツ」や「鯖の塩麹漬け(おろしのせ)」、「三色ナムルのひき肉あえ」といった店内調理の惣菜が並ぶ。店内のイートインスペースで食べることも、お弁当にしてテイクアウトすることも可能だ。
「手作りのため、どうしても大手のコンビニさんより価格は高くなってしまいます。ただ、店内調理にこだわりたかった。昔に比べればはるかにおいしくなっていますが、やっぱり『今日の昼飯、コンビニだった』と言ったときに、あんまりいいイメージはないですよね。店内調理によって、別の選択肢を示せたらいいな、と思ったんです」
この「別の選択肢」という考え方は、Pヴァインが手がけてきた「オルタナティブ・ミュージック」というジャンルに通じている。
「かっこよく言えば、時代の流れを柔軟に取り入れつつ、決してはやりに乗るわけではなく本物を追求する姿勢が、Pヴァインの持つ『オルタナティブ・カルチャー』だと思っています。nu-STANDも同様に、今あるコンビニに対して新しい選択肢になりたいと考えています。大手のコンビニは流通業ですから、工場からいかに効率よく商品を流して売っていくかに主眼が置かれている。そこで戦うのではなく、店内調理の食料品、ロゴや店内の雰囲気、かかっている音楽などで別の感性を入れていきたいと思っています」