自社の持つ技術情報とバーターで欲しい情報を得る

清川メッキ工業は「海外進出はしない」けれど、海外出張には出向き、各国企業との情報交換を行っているといいます。

「アメリカ、ヨーロッパ、東南アジアを回りますが、めっき開発が進んでいるのは、やはりドイツ、アメリカ、そして日本。ただ、それぞれ得意分野が違います。たとえば、アメリカは開発しても、ものづくりは台湾などで行うケースが多いです。ドイツや日本は“今、売れるもの”ばかり発信する傾向がありますね。そして弊社が欲しいマニアックなものや情報は、なかなか紹介してくれません。ですから、我々の技術や情報とのバーターで教えてもらうんです。つまり、こちらも相手が欲しがる何かを持っていなければならない、ということ。大学の先生と一緒に行って、向こうの大学の先生とも交流し、5年後に進捗を報告し合いましょう、という話をする。そうしたやりとりがなければ、これからの5年間に起きる変化は見られない。これは日本にいるだけでは絶対にわからないことで、最先端の尖った情報や技術をキャッチアップする努力はする必要があります」

開発、検査、試作、そして量産仕事と267人の社員は常に大忙し。そして、希望してパートで働く社員以外、全員が正社員。中途退職者はよほどの事情がないかぎり出ないそうです。親子、兄弟、親戚、夫婦……と身内で勤めている人がとても多く、まさに家族的な企業でもあります。

「離職率が高かった時期もありました。でも、たとえば現場の職場をクリーンにするように心がけたら、社員の疲労が軽減したように思います。QC活動や合理化も含めた改善活動を強化することによって、作業現場の環境が改善しました。コストダウンという言葉で考えるのではなく、環境に良いというキーワードを中心にして考えると、無駄な資源を減らすことになり、結果的に現場の環境が良くなるんですよ。それから、“自分がいかに楽でいるか”を追求させます。作業時間を半分にできる方法はないのか、といったことです。仕事を早く終えれば、早く帰れます。そうした改善を常に意識的に心がけるようになったら、離職率が激減しました」