今すぐ学ぶべき3分野
では、何を勉強すればいいのか。私が必ず必要だと思うのは、リーガル、英語、会計(アカウンティング)の3つです。この3つだけは外せません。これらの基本的なことがわからなければ、これからのビジネスにおいて経営者は生き残ってはいけません。
むろん法律のすべてを勉強しろというわけではありません。しかし、コンプライアンスについての知識や、製品の欠陥などリコールの問題が起きたときなど、経営者が知っておくべきことがたくさんあります。また、法律を勉強する際には、どういう意図でつくられたものか、いわば、“法律の心”を知らないと会社の経営はできません。
英語は、一気に上手にならないものですが、ツールですから、なくてはならないものです。下手は下手なりにでも使えればいいわけですから、不自由しないレベルで身につければいいでしょう。
会計は最低限、財務諸表が読めるレベルは必要です。私は農学部出身でしたから、新卒で伊藤忠商事に入社したとき、貸方、借方、バランスシートや、損益計算書などが全然わからず、徹底的に勉強しました。最初にある程度のところまでしっかり勉強したら、一生使えます。
これはマーケティングについても同様で、まず基本を押さえることが重要です。私はコトラーの本を1冊読んだことがあるだけです。1回読んでも当然わかりませんでした。しかし、5回も読めばほぼ理解できます。MBAに行く必要もありません。ビジネススクールではケーススタディを勉強しますが、基本的なことがわかっていなければ、結局身につかない。やはり基本は大事なのです。
だからこそ、経営者になろうと思ったら、一番基本的なことがわかっていなければならないのです。経営者になることそのものは、それほど難しいことではありません。しかし、成功するのはやさしくない。成功を継続させるのはもっと難しい。ただ、経営は必ずしも難しいことをやっているわけではない。基本ができていれば、どんなことでも対応できるのです。
当社では、相談役の松尾雅彦さんが名誉塾長、私が塾長の「松塾」という勉強会を定期的に開催していますが、若手社員には、よくこういう話をしています。「会社という組織を成長させようと思えば、投資をしなければ絶対によくならない。個人もよくなろうと思ったら、投資しないといけない。その投資とは何か。それは学ぶことだ」と。人生で一番大事なことは学ぶことじゃないでしょうか。
1947年、京都市生まれ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。72年4月伊藤忠商事入社。医療機器販売の子会社を経て、93年ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人へ。同社の社長、最高顧問を歴任。2008年カルビー社外取締役に就任後、09年6月より現職。