育休取得に二の足を踏ませる空気が充満

井上氏は、これらの理由のなかでも、「昇進・昇給への悪影響」が重要であると指摘します。

「多くの男性は育児休業を取得すると、出世コースから外れるのではないかと心配しています。育児休業を取得する男性が少ない組織のなかで、取得に二の足を踏んでしまう雰囲気の解消が課題です。男性の育児休業取得を促進するためには、制度についての情報提供とともに、企業に対して職場復帰後の処遇や評価のあり方への検討を求めていく必要があります」(井上氏)
 
男性の育児休業取得に対する心理的な障壁を取り除くため、工夫を行っている企業もあります。具体的には、セミナーの開催やハンドブックの配布、さらには短い日数であっても対象者全員に半ば強制的に育児休業を取得させている企業もあります。現在の育児休業の取得率の低さを考えれば、今後もそうした取り組みの強化が必要であるといえます。

▼20~40代の意識と50代の意識は全然違う

【男性の育児休業取得率が少ない理由】

その3:管理職の理解不足

育児休業に関しては、世代間の格差もあります。

「パタハラに関する調査」によれば、子どものいる20代、30代、40代においては、「育児休業を取得したかった」と回答した人の割合が、「取得したいと思わなかった」と回答した人の割合よりも高くなっており、育児休業の取得に対してのニーズは高い傾向がうかがえます(図3)。

ところが、50代においては「育児休業を取得したことはなく、取得したいと思わなかった」と回答した男性は、約6割に上り、20~40代の考え方とは明らかに異なっています(図表3)。

上述した通り、育児休業が取得できなかった・取得できないと思う理由の上位には、「上司に理解がない」(30.2%)という回答が挙げられていることを踏まえると、育児休業を取得したいと思わなかった男性管理職の存在が、育児休業取得の障壁になっていることも指摘できるでしょう。

「期間の定めのない雇用契約の労働者からの申し出があった際に、育児休業を取得させないのは法律違反です。管理職も制度をきちんと理解しなければならないですし、法律も変わってきているので、企業側も定期的に管理職に対する研修を行う必要があります」(前出の井上氏)

企業としては、部下が男性の育児休業を取得できるように、男性管理職の意識啓発の活動に取り組むことが求められています。