「育休を取ると、昇進・昇格できなくなる」

実際にパタニティ・ハラスメントの経験者が取った対応としては、「だれにも相談せず、子育てのための制度の利用をあきらめた」という回答が最も多く、約6割に上りました(図表1)。菅村氏からはこのことについて次のように語ります。

「パタニティ・ハラスメントについて、連合の相談ダイヤルに相談をされる男性は非常に少ないのが現状です。女性に比べて、男性からの相談件数は少なく、男性は育児や介護の制度利用に関する相談をしづらいのだと感じます」

パタニティ・ハラスメントを受けた経験者は約1割という結果をみる限り、数字上は、決して多いとはいえません。しかし、パタニティ・ハラスメントを受けた際に、誰にも相談をしない男性が多い現状を踏まえると、そもそも育児休業が取得できないという職場の問題が顕在化しづらいのだと考えます。

【男性の育児休業取得率が少ない理由】

その2:「出世コースから外れる」育休取得の心理的障壁

「パタハラに関する調査」では、育児休業の取得経験と取得に対する気持ちについても聞いています。

子どもがいる人のうち、「育児休業を取得したことがある」と回答した男性は、わずか5.7%に過ぎません。ただ、「育児休業を取得したことがないが、取得したかった」と回答した男性は45.5%に上ります。

一方、子どもがいない人のうち、「子どもが生まれたときには、取得したいが、取得できないと思う」と回答した人は52.2%であり、育児休業の取得を希望するものの、実際に取得できなかった、あるいは取得できないと考える男性が多いことも明らかとなっています。

育児休業を取得できなかった、あるいは取得できないと考える理由を尋ねると、

「仕事の代替要員がいない」(57.9%)
「(育休中は無給のため)経済的負担となる」(32.6%)
「上司に理解がない」(30.2%)
「仕事から離れると元の職場に戻れるかどうかわからない」(26.9%)
「昇進・昇給への悪影響」(22.2%)

という回答が上位に並びます(図2)。