大したことのない腫瘍の手術で死亡

――医療が発達した現代において早死にする人にはどんな特徴があるのか。

【近藤】健康を気にするあまり頻繁に病院に通い、そこで見つかった大したことのない腫瘍のために手術を受け、術後の障害で亡くなる人がいます。あるいは塩分や肉をとりすぎるとよくないといって、健康を損なうほどに制限してしまう人もいる。医者の言うことを素直に聞いて、言いつけを守ったことで不幸に見舞われるなんてばかばかしい。加齢で痛みが出たり、がたがくるのは当然のこと。もっと自然体で暮らし、食べたいものを食べ、必要以上に病院にかからなければ、ストレスとも無縁の健康的な生活を送れたはずなのに、と思います。それこそが長生きの秘訣といえるのかもしれません。

【和田】戦後、日本人の平均寿命が延びたのは、昔からの日本食に加えて、動物性タンパク質の摂取量が増えたことが最大の要因です。肉も魚も、野菜もきちんと食べ、栄養状態がよくなったのです。長寿日本一であったころの沖縄では1日当たりの肉の消費量は100グラムでした。日本人全体の平均は80グラム、肥満大国といわれるアメリカでは300グラムを超えています。肉の食べすぎは心臓疾患の原因にもなりますが、極端に減らすと戦前に逆戻りです。

ちなみに、15歳から39歳までで死亡率トップは自殺。若いうちはメタボを気にするよりも、メンタルヘルスを健康に保つほうが重要に思えます。

和田秀樹
1960年、大阪生まれ。85年東京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修。米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、精神科医。現在、川崎幸病院精神科顧問、国際医療福祉大学大学院教授、一橋大学経済学部非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長。『医学部の大罪』(ディスカヴァー携書)など著書多数。
近藤 誠
1948年、東京生まれ。73年慶應義塾大学医学部卒業。同年、同大学医学部放射線科入局。79~80年、米国へ留学。83年より同大学医学部放射線科講師。2013年退官。がんの放射線治療を専門とし、乳房温存療法のパイオニア。患者本位の治療の実現に奔走。『がん放置療法のすすめ』(文藝春秋)、『医者に殺されない47の心得』(アスコム)など著書多数。12年、第60回「菊池寛賞」受賞。
(構成=唐仁原俊博 撮影=奥谷仁)
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