トリップアドバイザーの人気コンテンツにインフォグラフィックスを用いてひと目で情報をわかりやすく伝える「トリップグラフィックス」がある。ホームページのリニューアルに合わせ、ちょっと知っていたら自慢できる京都のプチ情報をまとめたコンテンツ「京都のトリセツ」を作成したところ、その秀逸なデザインとユーモア感覚がオンライン、オフラインで評判となった。

ウェブの連携もうまくいき「京都のトリセツ」も大成功。ちょうどその頃、外国人観光客の増加に伴うトラブルや苦情が急増した。

「来ていただけるのは非常にありがたいのですが、こういうことをちょっと知ってもらったうえで楽しんでいただければ、ということをまとめて啓発しようとなったのです」(前出・寺田さん)

それが、無理やり舞妓さんの写真を撮らない、社寺で騒がない、飲食店に食べ物を持ち込まない……など、19項目をまとめた「京都のあきまへん」というマナーガイドである。

「せっかくお越しいただいているのに、あれもダメこれもダメというと、おもてなし感がなくなってしまうので、チップは必要ありません。かわりに『おおきに』とお礼の気持ちを伝えてくださいね、というような柔らかいものも織り交ぜました」(前出・寺田さん)

「どこの観光地でも問題となる観光客のマナーですが、トリップアドバイザーとしても世界初の試みでした。なによりコンテンツとして面白くしようと。そして来られた方が楽しくスマートに過ごしていただけることを目標に作りました。欧米でも中国でも反響はよく、SNSで拡散され、海外メディアでも好意的に取り上げられました」(前出・大津さん)

このあたり、実にデリケートな問題だ。旅行客のマナー違反の多くは単に知らないだけなのだが、住民には傍若無人な振る舞いに感じられ、極端な話、外国人お断りという閉鎖的な感情も芽生えてしまう。実際ある自治体で外国人観光客向けのマナー集を制作したところ「あれダメ、これ非常識と、上から目線で気分が悪い」と反感を持たれて大炎上。回収騒ぎが起きている。

外国人観光客の増加で一番問題になったのがトイレの使い方だ。

「公衆トイレの清掃を委託している事業者をはじめ、いたるところからひどいことになっているという苦情が数多く寄せられました」(前出・寺田さん)

(上)京都市がトリップアドバイザーと組んで作成し、好評をはくした「京都ノトリセツ」と、その第2弾として英語と中国語で作成された外国人向けマナーガイド「京都のあきまへん」。いずれも印刷物とネットの両方で展開。とくにネット界では世界的に好感をもって拡散された。(1)中国語と英語が話せる案内スタッフが6人配置されている。(2)京都駅中央口の外国人旅行者専用案内所。(3)トイレの使い方ステッカー。(4)アジア人の大好きな自撮り棒もホームでは禁止のステッカー。(5)外国人優先タクシーレーンの看板。