京都市の外国人宿泊客は316万人(2015年)と過去最高を記録した。2014年(183万人)の1.7倍となったが、観光客の絶対数が増えれば、どうしてもサービスが行き届かなくなる。しかし、京都は「Travel+Leisure」誌のランキングで、2年連続で世界一に選ばれている。連覇は行政、民間の協力なくして達成できない。京都はどのような取り組みを進めてきたのだろうか。
まず、久しぶりに京都を訪れた人は、町並みの様変わりに驚くはずだ。
「条例改正により、屋上広告物や点滅式照明看板を禁止し、色彩や大きさなど、きめ細かな基準を策定して指導を行いました。取り組み以前は、屋外広告物の7割が違反と推測されていましたが、市民、事業者の皆様の多大なご理解とご協力を賜り、今では9割以上が適正に表示していただいています。また、歴史的な景観の保全・再生が望まれる主要な文化遺産周辺の無電柱化も進めています」(京都市産業観光局観光MICE推進室・寺田敏隆さん)
しかも、メインストリートの四条通は、4車線が2車線となり、そのぶん歩道が拡張された。
「観光客をターゲットにしたわけではなく、まちの賑わい創出、市民の生活を考えての取り組みです。歩いてこそ楽しいまち。商店街をはじめ、周辺からも歩きやすくなったと好評をいただいています」(寺田さん)
大量の観光客が訪れる町は、どうしてもマナーが問題となる。外国人観光客にどうマナーを伝えるか。京都市が組んだのは旅行サイト「トリップアドバイザー」だった。
「外国人観光客向けのホームページをリニューアルする際、13に言語数を増し、マルチデバイス対応などを行ったのですが、やはり、行政が一方的に発信するのではなく、信頼できる口コミサイトと相互リンクを張ったほうがユーザーは使いやすいだろうと考えました。そこでトリップアドバイザーさんと協議を重ねました」(寺田さん)
トリップアドバイザーは、世界48の国と地域・28言語でサービスを展開し、月間ユーザー数は約3億4000万人という、世界最大の旅行サイト。信頼度も高く、世界中の旅行者の口コミ投稿、写真投稿が見られるほか、宿泊料金の比較、ツアーや航空券の予約もできる。
面白いのがトリップアドバイザーの外国人旅行者の口コミをもとにしたランキング。日本の観光スポットの1位は、世界遺産の清水寺でも金閣寺でもなく、3年連続で伏見稲荷大社なのだ。
「伏見稲荷の連なる朱色の鳥居はアジアでもほかにない風景。SNSでも写真とか動画のインパクトは強いので、フェイスブックやインスタグラムでその風景がシェアされると、見てみたいと皆さん思われるようです」(トリップアドバイザー・大津陽子さん)