時には国民を見下し、時には外国人や異性を差別し、いつの時代にも出てくる政治家の失言・放言。なぜ嫌われるとわかっていながら、他人の感情を逆なでする言葉を発してしまうのか? 『政治家失言・放言大全』の著書がある政治評論家の木下厚さんは「よもや嫌われるとは思っていないんです」と指摘する。

「身内の集会で軽口を叩いたり、ブラックジョークでその場の笑いを取ることが、人気のバロメーターと勘違いしてるから、よかれと思って失言を重ねてしまう。特に政党交付金が出るようになって有権者との接触が減り、小選挙区制が導入されて人気投票的側面が強まってから、無責任な発言をする政治家が増えましたね」

そんな政治家を反面教師にした失言を防ぐコツは、「専門分野以外はあまり気安い口出しをせず、生半可な知識をひけらかさない」と「政界にかかわらずあらゆる社会はジェラシーが渦巻いており、すぐに足をすくわれることを胆に銘じる」だ。ただし、意見を主張する以上、失言を完全になくすことは難しいので、その後のフォローが大事だと木下さんは説く。

「失言を認めないまま釈明を繰り返したり、いったん謝罪した後で『なんで謝らなきゃいけないんだ』と開き直るのは、深みにはまるだけ。失言したら素早く真摯に詫びる。そして謝罪した後はひきずらず、できるだけ早く忘れて切り替える。罪悪感で孤立しないことも大切です」

「政治家の大失言」26

※肩書は発言当時のもの

――池田勇人通産相●1952

中小企業の5人や10人の破産、
自殺はやむを得ない
子孫を残そうとする利他の要素です。

この発言がもとで就任から1カ月で辞任に追い込まれる。池田は放言癖があり、大蔵相時代の「貧乏人は麦を食え」も有名だ。

――青島幸男参院議員●1971

佐藤(栄作首相)さんは財界のちょうちん持ち、
財界の男メカケだ

予算委員会で質問に立った青島が、政治資金や財界との癒着について首相を追及。のらくらりとした答弁に対して言い放った。

――麻生太郎首相●2008

たらたら飲んで、食べて、何もしない
人のカネを何で私が払うんだ

「医師には社会常識がかなり欠落している人が多い」と発言&陳謝した翌日、医療費について言及。セレブに保険制度は不公平に映る?

――世耕政隆自治相●1982

ヒロポンは学生時代に試験の前によく飲んだ。
気持ちいいし、能率が上がる

なくせ覚醒剤」という対談テーマのテレビ番組で発言。「覚醒剤の危険を強調したいため述べた」と釈明して、なぜか事態は収束。

――中曽根康弘首相●1986

大型間接税はやりません。
私の顔はウソをつく顔ですか

選挙期間中に明言したが、選挙で自民党が圧勝すると5%の売上税を導入するべく画策。翌年の選挙では惨敗し、売上税は廃案に。