今までを認めつつ、変わろうとする人を評価する
【丹羽】よくわかります。加えて言えば、まさに今までのやり方があってこその現在のセイバンがあるわけで、そこに対する評価、感謝を伝えつつ、変革に向かってほしいというメッセージになると良いと思いました。ハードアプローチ的に、大げさに褒める、褒めたことを社内で周知される仕組みを整えると言うのもありだと思いますね。先ほどお話ししたような「改革のための小さなチーム」を、社長が大きく評価するというのもありでしょう。
泉さんのお話は正しいし、メッセージも力強いのですが、それを受け止める相手が「かなわないな」という無力感を感じてしまっては、逆にパフォーマンスが下がってしまうことがあります。
【泉】なるほど……。
【丹羽】凄い人が凄いことを言っている、という風に認知してしまうと、「自分はダメだ」という意識が深層心理に刷り込まれてしまうことがあるのです。そうすると自己イメージが下がって、どんどん能力が発揮出来なくなってしまうのです。教育学でも、兄弟の関係などで実証されている事象でもあります。
「怒られたくない」というのも、心理学的には軽んじてはいけない心の動きです。そこには「恐怖」という強いファクターがあります。これは動物的な本能といってもよく、脳の中でも脳幹に近い、いわゆる「古い脳」で感じ取る感情なのです。これは理性的な損得の判断よりも優先されますから、恐怖をどう取り除くかというのは極めて大きな経営課題とも言えるでしょう。会社全体が良くなるから、恐怖に打ち克て、というのはかなり厳しい要求なのです。だから社員に問いかけるときも「何が怖いのか?」と聞いてあげるというのも1つのアプローチだと思いますね。
【泉】なるほどですね。まさに心理学ももっと勉強しなければと思っていたところでした。今日はありがとうございました。
国際基督教大学卒業、英国サセックス大学大学院修了後、野村総合研究所に入社。エグゼクティブコーチングと戦略コンサルティングを融合した新規事業IDELEAに参画。2015年4月、人と社会を大切にする会社を増やすために、コンサルティング会社、Ideal Leaders株式会社を設立し、CHO (Chief Happiness Officer) に就任。上場企業の役員・ビジネスリーダーをクライアントとしたエグゼクティブコーチングの実績多数。社員のハピネス向上をミッションとするリーダー「CHO」を日本で広めることを目標としている。