主役はテスラ、グーグル、パナソニック……

EV化で何が起きるかと言えば、クルマの値段が一気に下がる。内燃機関のクルマの部品点数は3万点と言われるが、モーターと電池のシンプルな仕組みで動くEVはその10分の1、3000点の部品で済むからコストや組み立て工数は激減する。EVが主流になれば自動車メーカーの社員の90%が要らなくなるかもしれない。さらにEV化とともに間違いなく進化するのが自動運転の技術。電気自動車で自動運転の時代になったら、クルマ社会はどうなるのか。伝統的な自動車メーカーにそれが見えているかといえば、何も見えていない。従来の延長線上でクルマづくりやマーケティングを考えていたら絶対に失敗する。自動車保険のあり方は当然大きく変わるし、そもそも自動運転の時代になれば車を持つ理由がなくなる。タクシーのように自動運転車を予約すれば、出かけるときに家の前まできてくれるのだ。スマホで錠を開けて、目的地を入力すれば勝手に連れていってくれて、乗り捨てOKということになれば自家用車の概念がなくなる可能性すらある。運転しないのだから免許だって要らなくなるかもしれない。世の中は革命的に変わるのだ。決して遠い未来の話ではない。EVを自動運転する時代に移行するまで20年以上かかるだろうが、その間は既存のクルマもEVも両方売れる。だが、私はすべての産業の主役交代を見てきたが、あるときから流れが加速する。オールドエコノミーの側がどんなにリストラで減量しても、太刀打ちできなくなる。

EVや自動運転の時代の主役は、イーロン・マスクが立ち上げたテスラモーターズやグーグルやパナソニックになる可能性が高い。旧来の自動車メーカーにとっては3つの要因で凍り付くような氷河期がすぐそこまでやってきているわけで、政府の紐付きでリストラも自由にさせてもらえないような会社が、迫りくる大変革期を乗り越えるのは難しい。PSAの積極戦略は周回遅れの愚策、と見る。

(小川 剛=構成 AFLO=写真)
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