ジビエを仕掛けるにはどうしたら?

どうやったらジビエは普及するか? ここでは、私なりに3つの提言をしてみます。

(1)「ジビエ」とひとまとめにせず、優先順位をつける

行政や送り手はとかく「ジビエ」をひとくくりで語りがちです。けれども、イノシシとシカとクマでは味も適した食べ方もそれぞれ異なりますし、そもそも動物としての印象が大きく違います。それをジビエとして総体で語ってしまうと、魅力がうまく伝わらないのではないでしょうか。各動物について個別に捉え、情報伝達においては動物間に優先順位をつけることが重要だと考えます。

写真=gori910/PIXTA

個人的な見解では、ジビエの中でも最初に普及しそうなのが、イノシシです。豚はイノシシを家畜化したものというのはよく知られているので、多くの人々にとって食肉としてイメージしやすい。また好みの差はあるでしょうが、イノシシが持つ適度な脂肪分は、さまざまな調理に向いています。

ジビエをひとかたまりにしてアピールするのではなく、まずはイノシシを優先的に打ち出して、その普及に注力する。その後にシカなど別の動物も売り込んでいき、最終的にジビエ全体が日本人にとってより馴染み深いものになるというのが、スムーズなステップだと思うのです。

(2)「ジビエ」という呼び方を変えてみる

1で述べたこととも関係しますが、2つめは「ジビエ」という呼称を積極的に使うのをやめてはどうかという提案です。もちろんシカやイノシシなどをまとめて呼ぶ必要性があることはわかります。そしてそれを「野生鳥獣肉」と呼ぶのはあまりに生々しいでしょうから、外来語を使うこと自体は仕方ない側面もあるでしょう。

しかし、元来耳慣れないフランス語を使ったばかりに、日本人との距離が遠くなってしまっている気がするのです。結果的にジビエをウリにしているのは、フレンチレストランを中心としたヨーロッパ料理の店にどうしても偏りがちです。

日本には古くからイノシシやシカを食用としてきた歴史があります。肉食が禁忌とされていたこともあり、イノシシを「ぼたん」、シカを「もみじ」と呼んでいたというのは有名な話です。「優先順位をつける」というひとつめの提案を踏まえて、「ジビエを食べよう」ではなく、「ぼたん肉(あるいはシシ肉)を食べよう」というメッセージであれば、和食店や居酒屋をもっと巻き込みやすくなるでしょう。さらに消費者との心理的な距離も縮まるはずです。